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毎度馬鹿馬鹿しいお笑いを一席。
「熊さん、蛇っちゅう生き物を知ってるかい?」
「何でえ、藪から棒に。ヘビだあ?蛇っちゅうとあれかい、くちなわだろ?」
「そうそう、そのニョロニョロ。で、蛇には足が無いな」
「あたりめえだよ。蛇に足なんぞ生えてたらトカゲと見間違うじゃねぇか」
「若し蛇に足があったら、そいつあトカゲかい?」
「トカゲにしちゃあ、胴体が長すぎるかな?でも、足があったら蛇じゃあねえよ」
「ふーん、そんなもんかいねぇ?足があったら蛇じゃない」
「ぜってえ違うね。足があるやつぁトカゲです」
「じゃあ、足の無い奴は蛇なんだね?」
「おっと、そう早合点しちゃあいけねえよ。必ずしも足が無いから蛇とは言えねえんだ」
「何でだよ」
「実あな、トカゲの仲間にも足なしトカゲとか、ミミズトカゲなんていう足の無いトカゲが居るんだよ」
「へえーっ、そうなのかい。ミミズトカゲなんて、ちょっと気持ち悪いね」
「だから、蛇には足が無いけど、足が無いから蛇ってわけじゃあねぇ」
「なるほど、俺は馬鹿だけど、馬鹿はみんな俺ってわけじゃないのと一緒だな」
「情けない仮令をするんじゃないよ、みっともない」
「時に熊さん、大酒呑みを『うわばみ』っていうわな?」
「いうね」
「うわばみってのも蛇だよね。大酒呑みを何でうわばみってのかね?」
「また訳のわからない質問を・・・、いいかい、えへん。
うわばみってえのは大きな蛇のことだ。大蛇だな。こいつあモノを飲み込むんだよ。
蛇って奴は歯が牙しか無いんだ。その牙で獲物を捕らえたら、あとは噛み砕かないで飲み込んじまうんだな。
鳥の卵なんざを殻ごと食って、木の枝から飛び降りて地面で腹を打ち、その衝撃で殻を割って中身を消化したりするんだよ。
つまり大きなモノ飲み、が転じて大酒呑みの意味に使われるようになったんだな」
「蛇には牙が1本しかないのかい?」
「1本じゃねえよ、左右1対だな。それも毒蛇なんかの蛇だけだな。それ以外に歯はない。歯が全然ない蛇もいるんだよ。だから、食っても前歯で噛み切ったり、奥歯で噛み砕いたりできないの。丸ごと飲み込んで消化するしかない、ってえわけだ」
「ふえーっ、熊さん物知りだねぇ」
「おだてたって何も出ねえよ」
「物知りついでに、もうひとつ教えてくんねぇか?」
「何だい?」
「蛇てのは、めん玉が丸いよな。瞼が無いのかな?」
「確かに蛇のめん玉は丸いな。いいところに気が付いたねぇ、八つぁん。
まさしくお説のとおり、蛇には瞼てえもんが無いんだよ。
だからまん丸なめん玉なんだな。実は蛇とトカゲの違いてのは、足のある、無しじゃねぇんだよ。
トカゲのめん玉には瞼がキチンとあるのさ。めん玉に瞼が無いのが蛇、なんだな」
「へぇ〜っ、そうなのかい。じゃあ、蛇は眠るとき眼をつぶらないの?」
「つぶれないな。眼ェ開いたまんま寝るんだ」
「器用なヤツなんだねぇ・・・」
「器用ってのとは違うと思うけどなあ」
「でね、ここからが本題」
「何だよ、今までのは枕かい?」
「蛇てのは、熊さんのお説によれば、足が無くて、牙以外に歯は無くて、めん玉が真ん丸い生き物って事になるな?」
「なるよ」
「ここに一枚の絵草子があるんだけどさ、ヘビルスてえ位だから、こいつあヘビだわな。
でも、足もあるし、牙以外に歯もあるし、おまけにめん玉が丸くなくって、まるでトカゲにしか見えないんだけど・・・」
「・・・」
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「どれどれ?
ふむ、確かに足もある。
牙のほかにも歯がある。
瞼も付いてる。
だけどね八つぁん、こいつあ問題ないよ。
こいつの名前を良く見てごらん、ヘビルスだ。
ヘビの特徴が、全部おルスでござんす。」
・・・お後がよろしいようで。
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JAN.18.2004
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