むかしむかし あるところに おじいさんと おばあさんが すんでいました。
    おじいさんは うみへ つりに おばあさんは いえで ごろごろして いました。
    おじいさんが つりをしていると とつぜん つりざおに おおきな えびが かかりました。
    おじいさんは よろこんで この えびを もってかえりました。

    「ばあさんや こんなに おおきな えびが つれたよ。さて どうしよう。」
    よくのふかい おばあさんは それをきいて ちょっとかんがえました。
    「じいさんや こんなにおおきな えびは ふたりでは たべきれまい。 いっそのこと このえびで みせものごやを ひらいたら どうじゃろう?」
    おじいさんは あまり のりきでは なかったのですが あまり ねっしんに おばあさんが すすめるので このえびを つかって えびずもうを みせることに しました。」

    「おおきな えびに かったら こばんいちまい さしあげます。 さあ ちょうせん ちょうせん!」
    おじいさんと おばあさんの はじめた えびずもう は おおあたり。
    うでに じしんのある おおおとこたちが こぞって ちょうせん しますが えびはとてもつよくて だれも かてません。

    あっというまに おじいさんと おばあさんは おおがねもちに なってしまいました。
    「なあ ばあさんや これだけ おかねもちに なったんだから そろそろ みせじまいをして えびを うみに かえしてあげよう」
    でも よくのふかい おばあさんは
    「なにをいうておる じいさんや まだまだ このえびで ひともうけ できるはずじゃ。 いま てばなすなんて ばかも やすみやすみ いいなさい。」
    と まったく あいてにしません。

    えびずもうの にんきは またたくまに くにじゅうに しれわたります。
    そのうわさを きいた おとのさま。
    「よも えびずもう とやらを みてみたい。おしろの いちばん つよい ぶしと たたかっても えびが かつのであろうか。」
    と えびずもうに きょうみ しんしんです。

    その はなしを きいた おばあさん。
    「おとのさまの まえで すもうがとれれば やまのように こばんが もらえるぞい。」
    と おおよろこびです。
    でも おじいさんは すこし きにいりません。
    おとのさまの けらいが まけてしまったら おとのさまは きっと おこるにちがいありません。
    もし そんなことになったら こばんをもらえるどころか うちくびに なってしまうでしょう。

    そこで おじいさんは えびに こっそり はなしかけます。
    「なあ えびよ おまえも もうこのへんで うみに かえりたいだろう。
    つぎの しあいは おとのさまのけらいだ。 おまえが かつと きっとたいへんなことになる。 だから まけてくれないか。」

    えびは おじいさんに いいました。
    「おじいさん おきもちは わかりますが やおちょうは いけません。わたしが かっても なんとかなるでしょう」
    おじいさんは いいました。
    「やおちょうを すすめては いけないね。これは わしが わるかった。でも ほんとうにだいじょうぶだろうか。」
    おじいさんは きがきでは ありません。

    さて いよいよ おしろでの ごぜんじあいが はじまります。
    えびの あいては おしろでいちばんつよい おかかえの おすもうさんです。
    ぎょうじの かっこうを した おじいさんが ぐんばいを かえします。
    「はっけよい のこった」

    しょうぶは あっけなく おわりました。
    なんと えびが かってしまったのです。
    「えらいことじゃ えびが かってしまった。おとのさまは おいかりになるに ちがいない」
    ところが おとのさまは おおよろこび。
    「おお すごい すごい。にんげんより つよいのだな このえびは。どうじゃ ひとつ このえびをわしにゆずってくれまいか?」
    おばあさんは びっくりぎょうてん。まだまだ かせげる えびです。いま おとのさまに うる おかねの なんばいもの おかねを かせぐことが できるのです。 それを おとのさまに うるのはおしいとおもいました。
    そこで おばあさんは ひとつ うそをつくことに しました。

      「おとのさま もうしわけございませんが この えびを おうりするわけには まいりません。」
    「それは なぜじゃ?」
    「この えびは ずいぶん はたらきました。もう うみに かえして やらねば なりません。」

    よくのふかい おばあさんが そんなことを いったので おじいさんは びっくりしましたが かんげきしました。
    「ばあさん ありがとう よく いってくれた。おとのさま そういうわけで これは もう うみにかえそうと おもうのです。」
    おとのさまは おおきく うなずきました。
    「うむ えびは やはり うみで くらすのが いちばんじゃ。よくいった。ほうびをつかわすぞ。」

    おじいさんと おばあさんは おとのさまから たくさんのほうびをもらって いえに かえりました。
    「ばあさん それで えびを うみにかえすのは いつだい?」
    「ばかだね じいさん。えびを かえす わけがないじゃないか」
    「なに! それじゃあ おとのさまを だましたのかい?そんなことをしたら うちくびに なってしまうぞ」
    「だからね じいさん ここをでて べつのくににいき そこでまた えびずもうを みせれば いいんじゃよ」

    よくの ふかい おばあさん。さすがに あたまが まわります。

    そうして よくじつの あさには おじいさんと おばあさんと えびは いえをでて となりのくにに むかって しゅっぱつ しました。
    くにざかいの おじいさんが えびを つりあげた うみべに ちかづいたときです。
    とちぜん うみの なかから おおきな かみさまが あらわれました。

    かみさまは おおきなこえで おじいさんと おばあさんに いいました。
    「おまえたちは なんという よくのふかい にんげんなんだ。いままで だまってみていたが もうゆるせん。 ばつをあたえるぞ」
    そのとき えびが かみさまに むかって いいました。
    「かみさま ふたりのうち わるいのは おばあさんです。 おじいさんは いつも わたしを まもってくれました。だから ばつを あたえるなら おばあさんだけに してください。」
    かみさまは うなずくと おばあさんめがけて えいっと まほうをかけました。
    すると どうしたことでしょう。おばあさんの こしは みるみるうちに えびのように まがってしまいました。

    そうして かみさまと えびは こしのまがったおばあさんと おじいさんをのこして うみのなかに きえていきました。

    ところで うみのかみさまは おばあさんに まほうをかけるときに ちょっと ちからをいれすぎてしまったのです。
    それからというもの にんげんは としをとると この うみのかみさまの まほうがきいてしまい こしがまがってしまうようになったということです。


JAN.18.2004
TOPに戻る ひとつ戻る ひとつ進む
All Rights Reserved (C) JUMBOW-YAMADAX 2005