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●男たちの旅路(第1部)

cover パイオニアLDC
1976年放映:NHK
第1話:「非常階段」
第2話:「路面電車」
第3話:「猟銃」
主演:鶴田浩二・水谷豊・桃井かおり・森田健作
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【鶴田浩二の代表作と言って良い名作】

1970年代にNHKの土曜ドラマで放映された名作ドラマである。
日本テレビドラマ史上、最高傑作のひとつと言ってもいいだろう。
ある警備会社に、柴田竜夫(森田健作)、杉本陽平(水谷豊)の二人が入社し、上司である吉岡指令補(鶴田浩二)に出会う所から、この物語は始まる。

第1話「非常階段」では、その2人が新しくガードマンとして加入し、吉岡指令補と島津悦子(桃井かおり)と出会うエピソード。
「生きる目的と意味」と書いてしまうと、何だか大げさなテーマになってしまうが、導入編である第1話では、各キャラクターの「生きることの意味」を明確化している。
決められたレールの上を走って生きていく事に反発を覚え、自分の人生を見出そうとして苦悩する柴田竜夫。彼は制服で働くことにちょっとした快感すら覚えていく。
さしたる目的は無いし、ガードマンは給料が良いからという理由だけで就職してきた杉本陽平。彼はお調子者だが、次第にこのドラマのスパイス的な役割を果たしていくことになる。ある意味で、「チャラチャラした現代の若者の代表」である杉本と「未だに戦争を引きずって生きている古い人間」である吉岡との交流を描く事が、このドラマのひとつの重要なテーマになっているようにも思われる。
事実、第4部での杉本陽平の役割は、非常に重要なものになっていくわけなのだが、それについては第4部のレビューに譲ろう。

吉岡指令補は、「特攻隊の生き残り」であり、彼にとって現在の人生は余生でしかない。志半ばで死んでいった同胞に、すまないと思いながら、彼らを忘れないでやる事だけを生きる目的として生きている。
そんな彼にとって、自殺をすることなどはもってのほか。何の理由もなく、ただつまらないから死んでいくなんていう事が許せるはずがない。
彼らは、自殺の名所と噂されているビルを警備することになる。そして、そのビルに、「生きる事の意味を失って、なんとなく流されて生きているだけの生活に虚しさを感じた」島津悦子が自殺しに来る。ビルの清掃用ゴンドラに乗り込み、「近づくと飛び降りるわよ」と脅す悦子。あまりの悦子の身勝手さに「勝手に飛び降りて死んじまえ!」と叫ぶ竜夫。そして吉岡指令補が悦子を恫喝する。
このラストシーンは圧巻。
欲を言えば、もうちょっと悦子の心の揺らぎをうまく描写できると良かったような気がするが、1時間半という限られた時間枠の中でそこまで求めるのは酷というものだろうか。
連続ドラマであれば、2回分のボリュームが楽しめる快作。

第2話「路面電車」は、それぞれの主人公たちの背景を掘り下げて行く。
前半では、第1話で吉岡に自殺を止められた島津悦子が新たに警備員として応募してくる話から始まる。
「自殺を考えるような奴に警備員は勤まらん」と一喝し、許可しない吉岡指令補。
しかし、何とか悦子の入社を認めさせようと食い下がる柴田。その食い下がり方に普通でないものを感じた吉岡は、「君も自殺しようと考えたことがあるのか?・・・まさか、君ではなく、自殺しようとしたのはお母さんじゃないだろうね?」と聞く。
「どうして、いつも母の事を聞くんですか?」いぶかしがる柴田。
吉岡ははぐらかすが、柴田の母親は、かつて吉岡が好きになった人であった。
そのエピソードについては、第3話で詳しく語られるのだが、伏線は第1話から張られているので、注意深く見てみると面白いだろう。
晴れて警備員として採用された悦子は、ある日スーパーマーケットの警備に就く。常連の万引き客と思われながら、なかなか尻尾を出さないので捕まえられない女を追い詰め、見事に捕まえることに成功する。店の外まで追いかけて捕まえたのだが、帰る途中に喫茶店へ寄り道して、犯人の女性とお茶を飲んでしまう悦子。そして悦子は、この万引き犯(結城美栄子)の話を聴いて同情し、捕まえずにそのまま逃がしてしまう。
どんな理由があろうとも、万引きは万引き、逃がす事は許されないと正論をはく吉岡と、それに反発する3人。ついに3人は、ガードマンの仕事を辞めてしまう。
吉岡に反発して、仕事を辞めてしまう3人だ、そこで終わってしまってはお話にならない。
反発しながらも次第に吉岡に惹かれていく悦子、陽平と、惹かれながらも自分の母親との過去にこだわる柴田との意識のずれが出始める。
そして、柴田の母と吉岡が運命の再会を果たすところで第2話は終わる。

第3話「猟銃」では、彼らの勤めていた警備会社が警備しているビルに、連続して猟銃が撃ち込まれるところから始まる。警備会社に恨みを持つ者の犯行なのか?事件は思わぬ方向に発展していく。
一方、悦子は職探しをはじめるが、どうにも気に入った仕事が見つからない。やはり、ガードマンの仕事に戻りたくなって来る。さて、そんな3人が、柴田の母と吉岡の関係を問いただす事になった。特攻隊で死んでいった者たちのために、全ての気持ちをを封印して、友の事を忘れずに生きていくことだけを考えている吉岡が、初めて自分の心情を吐露する。
そんな奇麗事は信じられないと反発する陽平。
人間にはきれい事を押し通す力があるってことを忘れるなと主張する吉岡。
母に全く愛されていなかった父の立場はどうなるんだ?と詰め寄る柴田に、それとこれとは関係ないとばっさり切り捨てる吉岡。
事の良し悪しはさておき、全てにおいて自分の尺度で瞬間的に決定し、逡巡することの無い吉岡の態度は、シリーズを通じて、彼の一貫した魅力となっている。
最近の日本人の、何と逡巡することか。仮に間違っていようとも、その場で最善と思うことを即座に判断し、実行できる力を持った日本人は、本当に少なくなった。
このシリーズを今回のDVD化で見直して一番感じるのは、20数年経った今でも、ドラマの中でのテーマや問題が、全く色あせることなく我々に訴えかけてくる内容であるということだろう。それだけ、山田太一脚本が優秀だったという事なのかもしれないし、逆に、日本人が何も進歩していないだけという事なのかもしれない。

さて、猟銃事件の方はどうなったかというと、、、
今回は熱くなって書きすぎたきらいがあるので、それくらいは見てのお楽しみという事にしておこう。