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●男たちの旅路(第2部)

cover パイオニアLDC:
1977年放映:NHK
第1話:「廃車置場」
第2話:「冬の樹」
第3話:「釧路まで」
主演:鶴田浩二・水谷豊・桃井かおり・柴俊夫
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【土曜ドラマの名作:第2弾】

1970年代にNHKの土曜ドラマで放映されたのがこの番組である。
この時間枠は、夜7時半から1時間半という、ドラマ枠としては比較的長丁場になる時間帯で、海外ドラマの「刑事コロンボ」「警部マクロード」なんかをやっていた時間帯だった。
70年代中ごろと言えば、雀坊堂は中学生から高校生になる時期で、子供じみたバラエティ番組なんかより社会派ドラマに興味を持っていたりしたので、この「男たちの旅路」シリーズや松本清張シリーズ、向田邦子の「阿修羅のごとく」などには随分と熱中したものだった。
さて、第2部となる本作品では主人公に交代がある。

第1部のストーリーテラー的存在であった柴田竜夫(森田健作)はガードマンに復職せず、代わりに鮫島壮十郎(柴俊夫)が加入して来る。杉本陽平(水谷豊)、島津悦子(桃井かおり)は連続して出演。もちろん、主人公は吉岡指令補(鶴田浩二)。
第1話「廃車置場」では、その鮫島が新しくガードマンとして加入してくるエピソードから始まる。
「廃車置場」でのテーマは「仕事の内容」「仕事の範囲」。
仕事を選びたいという事。仕事の範囲と、自分で納得すべき仕事とは何かという事について、この話は我々に訴えかけて来る。
「仕事を選ぶのならば、自分で仕事の範囲など決めず、納得のいくまで逸脱してしまえ」
と言い切る吉岡指令補の意見は暴言とも取れるだろう。
実際に、仕事の範囲を逸脱することによって、ある事件が発生してしまう。
与えられた範囲の中だけで仕事をしていればよいのか?
納得出来るのであれば、その範囲を逸脱しても良いのか?
学生時代にはよく理解出来なかったテーマだったが、今40歳を越える年代になって改めてこのドラマを見る事によって、考えさせられる事の多い内容に仕上がっている。
仕事を逸脱した事で停職処分を食らった鮫島、杉本の二人は、仕事抜きで犯人探しを始める。
そして、ふとしたキッカケから犯人を突き止め逮捕することに成功するのだが、捕まえた後の後味の悪さを感じてしまうのだった。
このエンディングについては、何か割り切れないものを感じてしまう。

第2話「冬の樹」のテーマは「子供を愛する事と叱る事」。
人気バンドのゴダイゴのコンサートで、熱狂した女子高校生が頭を打って失神するという事件が発生。
少女(竹井みどり)を家まで送り届けた吉岡は、父親(滝田祐介)から警備会社の管理体制の不備を徹底的になじられてしまう。
しかし「あなたは娘さんを叱らないのか?」と逆に父親を叱る始末。
吉岡指令補の魅力とは、時に自分の信念が強すぎて暴走し、逆に若者たちにたしなめられてしまったり、心配されたりする部分にもある。
親として子供を心配し、叱るのではなく、自分たちの体面とか保身だけを考えて子供に文句を言う親と、それを敏感に感じ取っている子供の気持ちのすれ違いという問題については、現在でも充分に通用するテーマだろう。
「お嬢さんを叱ってやらねばいかんのだ、抱きしめてやらねばいかんのだ」と言う吉岡指令補の気持ちは、子供を持ったことのない私でも痛いほど良く分かる。
一方で父親の「どうしたらよいか分からんのです」という気持ちも分かる。
このエピソードも、25年経った今、改めて見直すことによって、その面白さと奥深さを痛感せざるを得ない。

第3話「釧路まで」は、思想的な問題がテーマとなる。
クメール共和国の仏像を破壊するという予告が入り、急遽飛行機で運搬する予定をフェリーに変更し、吉岡らが警備にあたる。
自らの命を犠牲にする事も辞さない爆破テロという意味では、25年を経たタイムリーな話と言うことが出来るだろうか。
内容的にはサスペンスドラマ的な脚色が中心で、全ストーリーの中でも異色の作品に仕上がっている。
吉岡指令補と対峙するのは犯人(長塚京三)ではなく、同じ世代を共有しているフェリーの船長(田崎潤)という所がこの話のミソ。
「息子が何を言っているのかさっぱり分からんのだ」という船長の独白は、第2話にも通じる世代間の隔たりを感じさせる。
内容的には、1時間半という枠の中で捕らえるには話が大きすぎたのだろうか?犯人像が不明確で、多少不満の残る内容になっている。
欲を言えば思想的な部分での、吉岡指令補と犯人とのぶつかり合いを、もうちょっと深く見てみたかった。
そうは言いながらも、全編カーフェリー内でのロケというのも話題となり、サスペンス物としては充分楽しめる作品に仕上がっている。

単発ドラマとして、特に先入観や予備知識が無くても楽しめる内容になっているのは流石だが、やはりこのドラマを楽しむには第1部から通しで見ると良いだろう。
特に第1話では、エピソードの端々に第1部からの引継ぎを感じさせる台詞や場面があるので、笑える部分や考えさせられる部分も含めて事前に第1部を見ておかれる事をお勧めしたい。
もちろん、第1部を見ていないからといって、このドラマの魅力が半減するわけではない。特に驚かされるのは、そのまんまの脚本でリメイクしても、決して色あせる事なく現代のドラマとして立派に成立する内容になっているという事だろうか。
今だからこそ、もう一度見てみたい、見て貰いたいドラマの代表作である。