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●男たちの旅路(第3部)

cover パイオニアLDC
1977年放映:NHK
第1話:「シルバーシート」
第2話:「墓場の島」
第3話:「別離」
主演:鶴田浩二・水谷豊・桃井かおり・柴俊夫
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【やるせない結末】

1970年代にNHKの土曜ドラマで放映された名作ドラマの第3部。
何ものにも動じない、若者が大嫌いな熱血中年「吉岡晋太郎」と、彼を取り巻く若者たちが織り成す人間ドラマである。
さて、この第3部は今までの第1部・第2部とは様相が一変する。
これまでスーパーマンになり過ぎた吉岡を、このまま放っておいては、ますます超人化していくだけになってしまう。それでは面白くない、とばかりに、この第3部では、徹底的に吉岡を無力化していくエピソードが続くのだ。

第1話「シルバーシート」は芸術祭大賞を獲得した話である。
都電の車庫での電車ジャックが発生。老人4人(笠智衆、加藤嘉、殿山泰司、藤原鎌足:凄いメンバーだよね)は、車庫で電車を占拠したまま出てこない。
たまたま、もう一人の老人(志村喬)の死をきっかけにして、陽平と悦子はこの4人と知り合いになっていた。
ところが、この4人は電車ジャックをしたにも関わらず、何も要求せず、なぜ電車ジャックなどしたのか理由がまったく分からない。警察沙汰にする前に何とか解決しようという事で、我らが吉岡晋太郎が老人たちを説得しに行く。
が、さすがの吉岡にも老人たちの気持ちは分からない。何が希望なのか。何がしたかったのか。何のために?
その答えはドラマの上では明確にされていない。
結果として吉岡の説得もむなしく、老人たちは警察に連れられて行ってしまう。
私はこのエピソードを見て、言葉に出来ない絶望感のようなものを感じた。怒られて押入れに閉じこもる子供のように電車に閉じこもってしまった老人たち。その気持ちの奥には一体何があったのだろう。
多くを語らないことで、逆に、老人問題について、深く考えさせられる作品になっている。

第2話「墓場の島」は、陽平が、ある人気歌手のガードマンをするというエピソード。
「囁くように歌う歌手」という触れ込みでスターダムにのし上がった戸部竜作(根津甚八)。
彼を警備する事になった陽平だが、次第に戸部竜作と親しくなっていく。
そして、陽平は竜作からある秘密を聞き出す。自分の歌を歌わせて貰えなくなってしまった竜作は、人気絶頂の今、引退してしまおうと考えているのだった。
その秘密を聞いたお調子者の陽平は、ついうっかり吉岡に自慢してしまう。
「若いヤツにだってね、骨のあるヤツは居るんだよ。人気絶頂で引退しちゃうってんだから!」
しかし、吉岡は竜作のマネージャー(高松秀郎)の戦友だった。黙って見過ごすわけにはいかない。竜作と個人的に話をする吉岡。何とか食い止めようとするが、効果は無い。
竜作の話を聞いているうちに、吉岡は、次第に竜作のやりたい歌を歌わせてやればいいじゃないか、と思うようになる。
そして、引退を発表しようと決めたその日、吉岡はマネージャーに話をする。
が、マネージャーは動じず、笑って言う。「引退なんか出来るわけがない」
ステージに上がり、スポットライトを浴びる竜作。
ステージの袖で見守る陽平、吉岡、マネージャー。
結局、竜作は引退を口にすることが出来ず、そのまま歌を歌ってしまうのだった。

実はこのストーリー、原作では本当に引退してしまい、ガソリンスタンドで働く兄ちゃんに戻ってしまうという結末だったそうだ。
引退するなんてありえないというスタッフの反対に押し切られて、引退できなくなってしまったという設定に変更となったそうである。山田太一自身、戸部竜作と同じく、「自分の歌が自分の思うように歌えなかった」作品になってしまったのだ。
しかし、そんな竜作を最後まで信じ、引退できなくても信じ続ける陽平を描いた事で、このストーリーはそれなりに厚みを持った作品に仕上がっている。惜しむらくは、根津甚八の歌がもうちょっと上手ければ、説得力が倍増したと思うのだが・・・

第3話「別離」は本来、シリーズ最終作となるはずの作品だった。
陽平はいつのまにか悦子に恋心を抱くようになり、ついに告白するが、はぐらかされてしまう。諦めきれない陽平は、吉岡に悦子の本心を聞いて貰うように頼む。
吉岡が聞いてみると、実は悦子は不治の病に冒されており、結婚などとても考えられない状況だったのだ。その日、家に帰りたくないという悦子を仕方なく自分の家に泊める吉岡だったが、翌朝一番で陽平が訪れ、吉岡の家に泊まった悦子を見て完全に誤解してしまう。
しかし、誤解は誤解ではなかった。
実は吉岡も悦子に対して恋心を抱いていたのだ。悦子も吉岡に対して好意以上の気持ちを持っている。吉岡は、不治の病に冒された悦子を自分ひとりの力で治してやろうと、アパートを変え、輸血を行いながら看病に努める。
しかし、いくらスーパーマンであるといっても、仕事と看病を一人の力でこなす事は不可能である。仕事上でミスが発生し、悦子を匿っている事も表面化してしまい、吉岡は窮地に立たされる。そしてついに、悦子が怪我をして出血し、危篤状態に陥ってしまう。
いまわの際、今まで悦子の求愛に全く答える事をしなかった吉岡だったが、ついに一言「一緒になろう」と言う。
その言葉を聞いて悦子は息を引き取る。
スーパーマン吉岡は、自分の恋を成就することなく、一人電車に乗って東京の地を後にするのだった。

個人的にはこのエピソードは好きではない。
完全に無力化し、一人の男となってしまった吉岡に救いは無いのだろうか。
悦子との恋に敗れ逃避行する形で吉岡の物語を終わらせてしまうのは、あまりにもやるせない気がしたものだった。
そういう気持ちを皆、感じていたのだろう。スタッフなどの強力な後押しもあって、第4部が製作されることになったのである。