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●七人の侍

cover 東宝:

1954年製作:東宝
監督:黒澤明
主演:三船敏郎・志村喬・稲葉義男・加藤大介・千秋実・宮口精二・木村功・津島恵子・土屋嘉男他

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【これぞ映画!黒澤映画の最高峰。】

今更説明の必要は無いだろうが、敢えてインプレッションを書いてみよう。
とにかく七人のキャラクターが秀逸である。
ジョン・スタージェスが「荒野の七人」でリメイクしたが、あの映画には、まず「菊千代(三船敏郎)」が居ない。
菊千代が居なければ、「七人の侍」は成立しない。(一人居なければ六人の侍である、などというベタな話ではないよ)
菊千代の生きざま、あこがれ、恨み、そういったものがこの映画には凝縮されている。

勘兵衛(志村喬)がエネルギッシュである。
実は「七人の侍」は「生きる(志村喬主演の黒澤映画)」より後に作られている。
「生きる」の志村は老人であったが、「七人の侍」の志村は壮年のエネルギッシュな親父である。
枯れているのだが、死んでいない。あの「生きる」の老人と「七人の侍」の勘兵衛を見比べると、勘兵衛の方が若々しく見えるから不思議だ。

久蔵(宮口精二)がストイックな剣豪というイメージで、これまた良いのだな。
宮本武蔵をベースにしているようだが、武蔵のような「アク」が無い。人情味に厚いのに、それを隠している。
宮口は、この映画に出演するまで刀を持ったことすら無かったそうだ。そんな素人が映画の中では立派な剣豪になってしまう。そういう部分も映画の醍醐味と言えるかもしれない。

その他、平八(千秋実)、五郎兵衛(稲葉義男)、七郎次(加藤大介)、勝四郎(木村功)の役どころも、それぞれ計算され尽くした配役であると思う。

敢えて付け加えるなら、加藤大介は、是非「用心棒」での役どころと比較して貰いたい。眉毛の繋がったトッポイやくざ者と、勘兵衛を師と仰ぐ忠実な家来。このギャップも映画ならではの面白さであろう。

一方の農民たちも一癖もニ癖もある曲者ぞろいである。
勘兵衛たちに野武士からの守りを依頼しておきながら、完全に彼らを信用しているだけではない。
娘を心配する万造(藤原鎌足)と、結果的に勝四郎(木村功)と恋に落ちてしまう志乃(津島恵子)の親子関係もまた良い。
アップの場面で、志乃の目には必ずアイキャッチが入る。勝四郎との恋に情熱的に燃える志乃の気持ちが良く表現されている。
真面目を絵に描いたような利吉(土屋嘉男)と、天然ボケ与平(左ト全)の対比も面白い。
当たり前のことなのだが、人物像が明確になっているからこそ面白いのだ。倉本聰の脚本などにも良くあるのだが、劇中の役どころに必要の無い部分まで人物設定にこだわっていたりする。
そういう背景があるからこそ、台詞が真実味を帯び、役者が生きてくるのだな、という事を痛感させられる。

勘兵衛と七郎次は、この戦に参加する前に、どんな負け戦を戦っていたのか。
菊千代はどうして両親と死に別れ、どうやって今まで生きてきたのか。
久蔵の剣の修行にはどのような苦難があり、そしてどうしてあのようなストイックな人格が形成されていったのか。
利吉と女房の出会い、生活、別れはどのようなものだったのか。
そういう思いをめぐらせることも出来る。また、それを考えることの何と楽しく面白いことか。
良質のエンターテイメントには、見たあとにも引きずる面白さがあると思う。

良い良いばかりではレビューにならないのだが、良いものは良いのだから仕方が無い。
相当に練りこまれた脚本であることが解る。

多くの人が「この映画の中での唯一の不満」と指摘しているのが、最後の勘兵衛の台詞である。
「また負け戦をしてしまったな。我々が勝ったのではない。勝ったのは農民たちだ。」という台詞である。
この台詞が嫌いな人は、「農民が勝ったのか、彼らが勝ったのかは、見た人が判断すればよい話であって、余計な説明は必要ない」という感想を持つようだ。
確かにその通りなんだけれども、勘兵衛の台詞が無ければ我々はそういう事にすら気づかない可能性もあるわけで、説明調の台詞ではあるけれども、私はこの台詞はあった方が良いと思う。

3時間47分が、あっという間である。これが素晴らしい。
ところが、よく見ると無駄なカットや妙に長い「間」があったりするのだ。しかし、それすらも計算と思わせるような雰囲気が漂っている。
先ほどの勘兵衛の最後の台詞の前にも、妙な「間」がある。長い「間」があって、それからぼそっと勘兵衛が語りだすのだ。だから台詞に重みが出る。計算され尽くしたカットだと言えるだろう。

最後の戦いは雨の中である。西部劇では雨のシーンは存在しないから敢えて雨の決闘シーンにしたのだそうだが、これは映像特典として入っているメイキングのエピソードを見て貰い、もう一度本編を見るとその凄さが体感できると思う。

とにかく、本編も良いが、特典も良い。ディスク2枚目に入っているメイキングストーリーのような映像特典は貴重である。
あと、字幕が出せるので、聞き取りにくい台詞が理解できるのも良い。
リマスター音源になっているので、音声はかなり明瞭になっているのだが、それでも三船や左ト全の台詞なんかは全然聴き取れなかったりするので、字幕付きで見ると非常に良く分かる。
こういう部分が、DVD版の良さと言えるだろう。
LD版や劇場でしか見たことの無い人は、是非DVD版も見るべし。