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●ダーティーハリー

cover ワーナーホームビデオ

1971年製作:アメリカ
監督:ドン・シーゲル
主演:クリント・イーストウッド、ハリー・ガーディノ、アンディ・ロビンソン他

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【今、日本にハリーが居たらなあ・・・】

今見ると、本当に嫌な映画である。
30年後、日本国内で起きている異常犯罪そのものではないか。
既に30年前から、このような犯罪はアメリカでは当たり前のように起こっていたという事なのだろうか。それとも、30年の時を経て虚構が現実となりつつあるのだろうか。
一度逮捕しておきながらも、不当逮捕という事で釈放されてしまう犯人が、再度凶悪犯罪を引き起こす。今までは虚構の世界と思っていた内容だが、最近になって妙に真実味を帯びてきたのが、何とも恐ろしさを倍増させる。

一方で、昨今の凶悪犯罪の報道を見るにつけ、日本にもしハリー・キャラハンが居たらどうだろう、などと不謹慎な事をつい考えてしまう。
日本の警察はモタモタしていて、たてこもり事件などの解決に何時間もかけてしまうが、ハリーなら冒頭の5分で解決しちゃうに違いない。

続編が4作作られており、あのシーンは2作目だっけ?3作目だっけ?などと思っていたら全て1作目だった。それほど色々なエピソードが凝縮されている。
テレビで初めて見たのは小学校6年生くらいだったか。ひょっとしたら中学生になっていたかもしれない。
そんな中坊の私にとって、一番恐ろしかったのは、少女が誘拐されて、奥歯が送られてくるシーン。
これは子供心に恐怖を植え付けたね。
誘拐されて、麻酔もせずに奥歯を引っこ抜かれるんだよ。想像しただけでも震え上がってしまう。
仮にこれが切り取った指とか耳だったとしたら、気持ち悪さは感じただろうけど、痛みは感じなかっただろう。
「奥歯」というところに、誰でも経験のある抜歯の痛みを喚起させるのだ。良い小道具であると思う。
全裸の少女が死体で発見されるシーンはほんの一瞬だったけれども、奥歯のシーンがあったから、目を逸らさずにはいられなかった。

もうひとつ、妙に印象に残っているのが、犯人が「殴り屋」に金を出してボコボコにされるシーン。
ハリーの追跡を止めさせるために、わざと殴られ、それを警察の仕業にしようとした犯人の巧妙な手口なのだが、「金を出して殴って貰う」という事の意味が私には良く理解できなかった。殴ってお金を貰っている黒人が、妙に不気味に感じたものだ。

私は長年、テレビで日本語吹き替え版しか見ていなかったから、イーストウッドと言えば声はそのまま故山田康夫氏そのものになる。
私より、ちょっと年下の人たちになると、山田康夫といえば「ルパン三世」の方が有名だったり、「お笑いスター誕生」の司会役を覚えていたりするかと思うが、私の中では山田康夫と言えばイーストウッドである。
「刑事コロンボ」の声が故小池朝雄氏なのと同じように、イーストウッドの声は山田康夫なので、このDVDでほぼ初めて(だと思う)イーストウッドのナマ声を聴いたわけであるが、コロンボのピーターフォークのナマ声を聴いた時ほど違和感は感じなかった。
というか、字幕を読みながら頭の中で山田康夫の声に変換しながら見てるのであった。
これって凄いことだなあ、と思う。

酷い映画になると、それは無いだろう、と、突っ込みたくなるような声優を当てていて、それだけで興ざめになってしまうものだが、本当に山田康夫のイーストウッドはハマリ役だな。
ルパン三世のイメージが強いので、そちらを先に見ている人は何となく軟弱な印象を持ってしまうようだが、もし貴方が山田康夫版のテレビ放送をダビングしていたら、是非、目をつぶって山田康夫版のハリーの台詞を聴いて貰いたい。その声は、どう聴いてもルパン三世の声には聴こえないはずだ。
ルパン三世は栗田貫一でも誤魔化せるだろうが、ハリー・キャラハンはクリカンでは凄みが出ないぞ。

最後に凶悪犯人を追い詰めて一言、
「おまえの考えは分かってるよ、俺がもう6発撃ったかまだ5発か?」
「実を言うと、こっちもつい夢中になって数えるの忘れちまったんだ。でもこいつはマグナム44って言って、世界一強力な拳銃なんだ。」
「お前のドタマなんか1発で吹っ飛ぶぜ。楽にあの世まで行けるんだ、運がよけりゃな。」
「さあ、どうする?」

この台詞は映画の冒頭で、強盗犯人を捕まえるシーンでも語られている。
冒頭の強盗犯人はここで降参するのだが、ラストの犯人は銃を取り、ハリーに頭をぶち抜かれて死んでしまう。
最初のシーンでは、そのあと犯人に向けて銃を撃つのだが、弾は出ずに空撃ちとなる。
しかし、最後のシーンでは発砲するのだ。

テレビで見ていると良く分からないのだが、そこがDVDの良さ。ハリーが何発売ったかを意地悪くもリピート再生しながら計算してみた。
最初のシーンでは銃声は6発であった。
しかし、ハリーが射撃しているシーンは5回しか出てきていない。
1回は音だけである。本当にハリーが撃った音なのかどうかは微妙なところだ。
色々調査してみたら、この冒頭のシーンで音だけ1回鳴っているのは、DVD化の際に追加された音源だという。
つまり、最初の強盗犯人を捕まえたときの台詞は、相手を見据えた上で絶対に撃って来ないと確信してのブラフであり、最後に凶悪犯を撃ち殺した時の台詞はハリーの確信犯的演技である、という考え方によるものであろう。

しかしそのような後操作は好きではない。
やはりハリーは何時でも5発までしっかり数えており、最後の6発を撃つかどうかは相手が凶悪犯罪者で、それでも抵抗しようとしてくる悪人は遠慮なくぶち殺すと解釈した方が良いと思う。

ハリーは今まで何度も「5発か6発か?」のハッタリをかまし、犯人はそれに負けて投降していたのだと思う。
もちろん、弾は1発残っており、万が一反抗してきたら撃ち殺す準備は出来ている。
しかし、今までは誰もそのハッタリに対抗して銃を取る事は無かったのではないか。
そして今回の犯人「さそり」が、初めてハリーに反抗し撃ち殺された。
そのハッタリが通用しなかったことで、ハリーは自らバッジを投げ捨てた、と解釈したい。