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●エクソシスト(ディレクターズカット版)

cover ワーナーホームビデオ
1973年製作:ワーナーブラザース(米)
監督:ウィリアム・フリードキン
出演:リンダ・ブレア、マックス・フォン・シドー、ジェイソン・ミラー、エレン・バースタイン

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【日本人には怖くない】

この映画はオカルト映画とか、ホラー映画に分類されているが、私は宗教映画だと思う。
人間の持つ罪悪とか、欲望といった暗い部分を「悪魔」という形で具象化してしまったキリスト教の問題点を、「悪魔祓い」という作業を通して世に訴えかける作品である。
神を信じられなくなった神父が、神と相対する極限の象徴である悪魔を退治する。その矛盾と、揺れ動く神父の心情。科学の無力さと、すがるものなら藁をも掴む家族の気持ち。そういったものが凝縮されている映画である。
だから、キリスト教信仰のない人が見ても、表面的な怖さで終わるだけで、この作品の真の恐怖は伝わって来ないような気がする。


74年に日本で公開された当時も、リーガンの頭が180度回転したり、気味の悪い特殊メイクばかりが話題になっていて、「悪魔」と「悪魔祓い」そのものについての恐怖というようなものは話題にされなかった。
私は当時中学生で、怖いものは大嫌いだったので全く見に行く気にならなかったのだが、数年後テレビで放映した時に怖いもの見たさで見たら全然怖くなかったので拍子抜けしてしまった。

そういえば公開当時に、少年サンデーだったかマガジンだったかで、梅図かずおがエクソシストの紹介をやっていた。確か研ナオコにリーガンの扮装をさせ、特殊撮影の紹介をしていて「悪魔に取り憑かれてものすごい顔になったリーガン」とかいって殆んど素のままの研ナオコの写真が写っていたりとか、「えっ?糞シスト」なんていうベタなギャグが載っていて、子供心にゲンナリしたのを何故か強烈に覚えている。

今回のディレクターズカット版は2000年に公開されたもので、公開版より多少長めの編集になっているようだ。
公開時に、あまりにもショックなシーンという事でカットされたという「スパイダーウォーク」のシーンが追加されているのだが、これは無くても全く問題のないシーンだったように思う。
というか、あまりにも唐突すぎてグロテスク。ちょっと評価の分かれる場面だと思う。

少女リーガンの特殊メイクばかりがクローズアップされているが、このリーガン役のリンダ・ブレアは結構上手い。
可憐な少女と悪魔に取り付かれた少女を見事に演じ分けている。
しかし、それ以後の出演作には全く恵まれていないようだ。あまりにも「エクソシスト」のイメージが強すぎて、他の役が付かなかったらしい。
そりゃそうだよなあ。
この時代のリンダ・ブレアはかなり可愛いが、続編の「エクソシスト2」では見るも無残に太ってしまい、冴えないポルノ女優のようなイメージになってしまった。
映画自体も無残な内容であったが、それ以上にブクブクのリンダ・ブレアに萎えましたね、ワタクシ。
ちなみに、私は「エクソシスト2」のリンダを見ると、何故か天地真理を思い出してしまうのだが、気のせいであろうか。
その後80年代になって、本当にポルノまがいの映画に出演している。
「エマニエル夫人」と共演して肉弾相打つという、とんでもない女刑務所映画がそれである。「チェーンヒート」というタイトルであったが、残念ながらDVD化されていない模様。

話をエクソシストに戻そう。
最も印象が異なるのはラストシーンで、公開版ではカラス神父が死んだ階段の下を同僚のダイアー神父が見下ろして絶望感に浸るという暗い終わり方であったが、ディレクターズカット版では、この事件を調査していたキンダーマン警部が登場し、ダイアー神父と語り合いながら終わるという、比較的希望のある終わり方になっている。
私はどちらが好きかと聴かれたら、このシーンだけで言えば、ディレクターズカット版の方が良い。

テーマ曲を演奏しているのはマイク・オールドフィールドというプログレ系のアーティストの、「チューブラーベルズ」という曲である。記念すべきヴァージンレコードの第一作でもあるわけだが、あまりにも「エクソシスト」のイメージが強くなってしまったので逆ギレしたとかしないとかいう噂もあったりした。
曲だけの印象で言うなら非常に美しい曲である。しかし、この曲がエクソシストという画像と一緒になると、えも言われぬ恐怖感を醸し出すのだから、音楽というのは面白いものだ。

ところで、今回DVD版を見直して気がついたのだが、驚いたねぇ。この警部役で出演している俳優さん、「カラマーゾフの兄弟」とか、「波止場」、「十二人の怒れる男」なんかで渋い脇役を演じたリー・J・コップじゃないの。
今回見直すまで全然気がつかなかった。
この警部とカラス神父とのかけあいがディレクターズカット版のラストシーンへの伏線にもなっている。内容については見てのお楽しみとしておこう。

その他、場面場面でサブリミナル効果を狙った悪魔の顔のショットが多重写しされるのであるが、これはちょっと戴けない感じがした。これでは何だか安っぽいホラー映画を見ているような気分になってしまう。

今回のDVD版には、おまけとして本編2時間分たっぷり、延々と解説を続けるフリードキン監督の副音声と字幕が入っているので、興味のあるかたは是非参考にすると良いだろう。
普通の映画ファンとか一般人には地獄かもしれないが。

この映画がオカルト映画としての怖さを持っているとすれば、唯一、悪魔祓いの最後のシーンがそうだろうか。
心臓病を患っていたメリン神父は、悪魔との対決に敗れ絶命する。万策尽きたカラス神父は悪魔に取り憑かれたリーガンの首を絞め、「俺に取り憑け!」と言う。
そして悪魔がカラス神父に乗り移ったところで、自分の意識が残っている一瞬を使って窓から飛び降り、悪魔と共に絶命するのだ。
果たして、悪魔はカラス神父に乗り移ったまま絶命したのだろうか。
絶命する寸前に飛び出し、どこか別の肉体に入ったのではないだろうか?
その時、周囲にいた人間といえば、絶命したメリン神父のほかには、悪魔が抜け出たリーガンと、この映画を見ている自分しかいないのである。

そういえば最近何だか体の具合が悪いような・・・・