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●仮面の忍者赤影(卍党篇)

cover 東映ビデオコレクション

1968年製作:東映
原作:横山光輝
出演:坂口祐三郎、牧冬吉、金子吉延、天津敏

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【赤影的世界観の完成】

さて、赤影といえば、何といっても主題歌である。
赤影を語るのに、まずBGMなくしては語れないと思うのである。
主題歌はおなじみ、「赤い仮面は謎の人」のフレーズで始まるマーチ形式の名曲。
子供番組の音楽って、非常に難しいと思うのだけれど、この赤影の主題歌、挿入歌、BGMは全て完璧と言っても良いほどの出来。
戦闘シーンで流れる曲などは、微妙にチャンバラリズムなんかを取り入れながら作られており、実に良い感じ。
青影のテーマはコミカルに作られていて笑いを誘う。
最近の特撮系のように、ロックっぽいのや、仮面ライダー関係の曲なんかも悪くはないのが多いんだけど、残念ながらちょっとカッコ良すぎるんだよね。
子供のスタンスで聞くと、赤影くらいのテンポで、ちょっとダサめだけどわかり易い曲の方が、子供番組向けには向いていると思うのだ。
もっとも、最近のガキんちょどもなら、16ビートでも全然問題ないのかも知れないが。
ちなみに音楽担当は小川寛興氏で、「怪傑ハリマオ」や「忍者ハットリくん(実写版)」などの主題歌を手がけている。歌謡曲でも中村晃子の「虹色の湖」などを作曲している有名な人のようだ。

赤影の成功の第2ポイントとしては、3人の個性的な主人公を配役したという点であろう。
仮面を被った正義の人、それを補完する渋いベテラン忍者、狂言回し的な立場でありながら、視聴者(子供)と同年齢にすることで共感を呼び覚ます少年忍者。
この3人の絡みあいが絶妙。特に白影の役どころが成功の原因であろう。赤影と絡む部分では忠実なしもべであり、青影と絡むときには青影と同じ視線に下りてくる。「優しいおじさん白い影」である。
しかも空中に大凧を飛ばして大立ち回りも演じるというオマケつき。
まさにポリスで言うならスチュワート・コープランドのような渋さである。
音楽でも、トリオというバンド形態が一番良いと思う私にとって、赤影の忍者トリオは完璧な3人であるといえる。
ヒーロー5人体制を確立したのはゴレンジャーだが、緑は要らないだろう!とツッコミを入れたくなってしまうよね。無駄で地味な配役でありながら、余計なところで目立とうとするのは、まるでディープパープル第3期のグレン・ヒューズのように目障りだ。

さて、赤影シリーズは一部13話で四部作となるのであるが、このレビューでは、その中の第二部「卍党編」を取り上げたい。
第一部の「金目教篇」では、大魔神を彷彿とさせる巨大ロボット「金目像」と、それを取り巻く「霞谷七人衆」と赤影たちとの忍術合戦であった。
「金目像」じたい、結構スゴイ作りで、おいおいロボットかよ、と子供心にツッコミを入れたものだが、第二部ではさらに荒唐無稽さがヒートアップしている。
まず、いきなりビックリ、どういう構造なんだよ!とツッコミたくなる空飛ぶ円盤「大まんじ」。
梯子はアルミ製だし、中に入ると非常ベルの赤いランプなんかが付いちゃっている。
さらに全員何故かウエットスーツみたいな衣装を着て、毒ガスマスクなんか被っちゃってる「うつぼ忍群」。
まるっきり仮面ライダーの戦闘員みたいな「卍党の下忍」など、思わず戦国時代だろう?とツッコミを入れたくなるほどの奇想天外SFぶり。
しかし、このハチャメチャさが赤影第二部の魅力のひとつだと言えるかもしれない。

現代の視点で見ると、大怪獣に頼らない原寸大の忍者どうしの対決が功を奏していて、しかもただ単に悪いだけでなく中々茶目っ気のある敵忍者などもいて、笑いの要素がちりばめられているのが非常に良い。
最近の子供向け番組の中には、妙にシリアスな方向に走り、大人の鑑賞眼にも耐えるストーリーづくりをしているものも少なくないが、やっぱり子供向け怪獣番組は子供向けのわかり易いストーリーであって欲しいと思う。
良質な作品なら、子供だましのような内容であったとしても、大人の鑑賞眼にも耐えるのではないだろうか。

第一部ではシリアスとギャグが微妙にブレンドされていたのに対し、第二部ではかなりコミカルな要素が前面に出てきている。
「ギヤマンの鐘の謎」という謎解きをストーリーの中核にしながらも、少年忍者青影を中心として敵キャラまで笑いのネタにしてしまうのは立派。あの甲賀幻妖斎までもギャグに引きずり込んでしまうのだから大したものである。
後半では「鬼才」大泉滉の宣教師ペドロ、ジュリアンの一人二役によってストーリーの面白味が倍化され、さらに荒唐無稽な赤影ワールドが展開していくのだ。
少し悪乗り気味の後半であるが、最終回、戦いを止めさせるために自ら卍党に身をゆだねるペドロの決断と、そのために幻妖斎とともに爆死してしまう結末は一気にシリアスさを増す。
ペドロのおかしな日本語に笑えば笑うほど、最期の悲しい結末が生きてくるのだ。

さて、このように非常に優れた内容の作品に仕上がった赤影の第二部であるが、ターゲットである子供達にとっては、怪獣が出て来ないので今ひとつ受け入れ難い部分があったようで、視聴率的にももうひとつ盛り上がりに欠けたようである。
今見ると結構シニカルで笑えるシーンも、言い換えればくど過ぎる感じがして食傷気味であるとも言える。
このため、第3部「根来篇」、第4部「魔風篇」では、ストーリー自体かなりシリアスな内容になり、巨大怪獣が登場。チャンバラ活劇が減り、大怪獣との死闘が繰り広げられるようになるのだ。
このあたりの経緯は、「バンデル星人篇」で盛り上がらず、「怪獣ぞくぞく登場篇」で毎回新怪獣を導入していった「キャプテン・ウルトラ」の進行にも良く似ている。
第一次怪獣ブームは、あくまでも巨大怪獣がメインであり、等身大ヒーローの真の活躍は、仮面ライダーまで待たねばならないのであった。

※去る2003年7月15日、主演の赤影役、坂口祐三郎氏が他界されました。
ご冥福をお祈り致します。