筆者の購入したDVDや本、鑑賞した映画、テレビ番組、コンサート等のインプレッションを書いています。
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●2003年9月15日 イエス 国際フォーラムAホール

イエス、ベストメンバーでの来日公演を見に行ってきました。
これは、自分自身の備忘録を兼ねたインプレッションです。

開演まで
ジョン・アンダーソンの怪我で半年遅れたイエスのコンサートがいよいよ行なわれる。
半年ずれた分、期待も大きくなっていたが、インターネット上で語られるざまざまな書き込みを見たりすると一抹の不安もよぎったりする。
情報が的確に入ることは良いことなのだが、情報過多というのは良し悪しだな、と思ったりもした。
さて、「5時きっかりにスタートする」「グッズ売り場には長蛇の列」などの情報を事前に得ていた我々は、いつもより少し早めに会場入り。
「長蛇の列」のグッズ売り場には入場制限まであったりして、特に何かを買おうと思っていたわけではないのだが、思わず列に並んでしまうのは日本人の悲しい性である。
売っていたのはCDとかTシャツとかだけであった。特に買うべきものも見当たらないのだが、女房がTシャツを買ってくれるというので喜んで買って貰うことに。
何となく列に並んでいたら、売り子が「一列に並んでくださーい」とか言うので一列になろうとしたら、入れてくれない。そりゃないだろう、我々だって一応並んでるんだから。
仕方なく最後尾に回ったが、女房がキツーイひとこと。
「余裕の無い男ってサイテーだよね」
御意。
この余裕の無い人々は、ステージを見ていても余裕が無かったりしていて、今回のライブの中で一番残念な事柄であった。

そのあと、パンフレットを買って席につく。
このパンフレットが頂けない。2500円もしたのに英語だけ(全世界共通版なのか?)。
手抜きしすぎなんじゃないの?フジテレビ主催だから仕方ないか。

ステージは思った以上にシンプルで、学芸会のような感じ。ボール紙に銀紙を貼ったようなロゴマークがぶら下がっているだけで、あとは機材に銀色の布が掛かっている程度。
今時の素人バンド以下のステージセッティングである。
正直言って、今まで見た外タレの中で最低のステージセットであった。
セットを調整しているローディーも太ったオヤジがひとりだけ。しかも充分に年寄りである。
大丈夫なんだろうか・・・段々不安がよぎってくる。
それでもプログレオタクと思しき人たちはセットのそばに行き、ドラムセットやキーボードなんかを熱心に見つめていた。

5時きっかりに、「開演します」のアナウンスがあり、いよいよ30年ぶりのベストメンバーでのイエス来日公演が始まるのであった。

ステージ衣装を説明しておこう。
ジョン・アンダーソンは薄いブルーのスウェットの上下。スウェットだよ。日曜日に公園でおじさんがジョギングしているようなスタイル。後半は黄色に着替えた。チューリップの歌に合わせたわけではないだろうが。でも、やっぱりスウェット。
スティーブ・ハウは、柄物のシャツを着ていたが、後半ではラクダ色のTシャツ一枚になっていた。あれにラクダ色の腹巻をしたら完璧に「その辺のオヤジ」になっていただろう。
クリス・スクワイアは、薄手のシャツの上にロングコートを羽織っていた(クソ暑かっただろうなあ!)。流石に後半ではコートを脱ぎ、シャツ姿になる。レザーパンツのような黒くてぴったりしたズボンが「ぱんぱん」で哀れ。
リック・ウェイクマンは何時もリックであった。お馴染みのスパンコールをちりばめたガウンに黒いTシャツ。首から大きめの十字架をぶら下げている。30年前と殆んど変わっていない。
アラン・ホワイトは、、、、あれっ?どんな格好だったっけ???

    オープニング~"Firebird Suite" オープニングはおなじみ、ストラビンスキーの「火の鳥」 音楽に合わせてメンバーが登場。 ああ、動いてるよ。ジョン、クリス、アラン、スティーブ、リックが続いて登場。 各メンバーとおどけたポーズを決めながら挨拶するジョン・アンダーソン。 荘厳な曲と太ったおっちゃんのパフォーマンスが全然合ってない!! しかし、これが円熟したバンドの余裕なのだな、と思ったら何となく安心した。

  1. Siberian Khatru
    お馴染みのギターイントロで始まる1曲目は、お約束のシベリアン・カトゥール。
    いやあ、まずいよこれ。スティーブ・ハウがよれよれ。
    昔からよれよれだったが、よれよれ度に拍車が掛かってしまった。
    ギターのメインフレーズになるとテンポが落ちる。全体にゆっくりめの演奏。やっぱり年取ったのかなあ?

    しかし、ジョン・アンダーソンの声は、もうすぐ60歳とは思えないくらい若く、リック・ウェイクマンのキーボードもパワフルであった。
    イントロで、もたついた感じだったスティーブのギターは、中盤で盛り返す。
    おおっ、このフレーズはスティールギターだったのね!!
    中盤から後半にかけて盛り上がったのであるが、残念ながらやはりキメのフレーズでテンポが遅れる。
    スティーブは怪我をしているという噂もあり、ここでも不安が募るのであった。

  2. Magnification
    2曲目は「新曲」といってももう数年前になるわけだが、この曲は実は未聴であった。
    なかなかポップな感じで良いのだが、客席は今ひとつ盛り上がらず。
    確かに、自分も含めて多くのファンは嘗ての「Fragile」「Close To The Edge」からの曲を望んでいるわけだが、曲がりなりにも再結成ではなく、メンバーが変わっても延々と演り続けてきたバンドなのである。
    今の曲でも盛り上がる余裕が、自分も含めて観客に足りなかったように思える。

  3. Don't Kill The Whale
    殆んど曲を開けずに始まったのだが、この曲でも盛り上がりに欠けた。
    個人的には好きな曲なのだが、日本という国の中で「クジラを殺すな」というメッセージソングを歌うことの意味は、非常に複雑である。
    そういう思いもあってか、観客は今ひとつ盛り上がらず。
    この曲で盛り上がらないことと、Magnificationで盛り上がらないことの意味は大きく違う。
    個人的には嬉しかったが、日本でこの曲は演るべきではなかったのかもしれない。他に聴きたい曲はいっぱいあるし。

  4. In The Presence Of
    盛り上がりに欠けるとはいうものの、演奏は時間を経るにつけ良くなって行く。
    リックのキーボードで始まり、ジョンのボーカルが被さってくるこの曲もMagnificationと同じアルバムからの曲であるが、思った以上に良い曲であった。
    後半のクリスのベースプレイも最高。全盛期から比べると3倍くらいの体重になっていると思われるがノリノリで、特に最後のフレーズを弾くところは非常にカッコよかった。
    メンバーの中では一番動きが良かったかもしれない。

  5. We Have Heaven/South Side Of The Sky
    「次の曲は30年前の日本公演の直前に作りました。「Fragile」に収録した曲を今回もやります」というジョンのMC。
    「Fragile」という単語で観客は盛り上がったが、始まった曲が We Have Heaven だったので多少ズッコケタ人も居たようである。
    私としては、この曲は大好きなので問題なし!
    ジョン・クリス・スティーブのハモりが予想以上に良かったので、観客も盛り上がってくる。
    最後に足音の効果音が!!走る真似をするジョン。小細工が効いている。
    そして続いての South Side Of The Sky。
    この曲も凄かった。
    90年ごろまで一度もライブで演奏していなかったそうである。
    ジョンのボーカルが凄い、まさにひとつの楽器のようであった。
    ところで、1曲目では非常に気になっていたスティーブのギターだが、いつのまにか全然気にならなくなっていた。
    スロースターターなのか?古いから潤滑油が回るのに時間が掛かっちゃうのかね?

  6. And You And I
    スティーブがスタンドに括りつけた12弦ギターを弾き出す。「同志」だ!
    スティーブとリックの掛け合いが物凄い。30年前のイエス・ソングズ以上の出来。これは素晴らしい。
    ノリすぎたスティーブが足をタップして踊るしぐさまで見せる。「おじいちゃん!危ないからやめてくれ!!」いや、マジで。

    クリスがブルースハープを奏でたのはこの曲だっけ?
    女房が感激していた「ハープを後のローディーに向けて投げる」シーンは、残念ながらスティーブのギタープレイに集中していたので見ていないっ!しまったっ!!!

    スティーブのスイッチワークとか、指をまっすぐにして速引きするリックのキーボードとか、こういうのはライブで見ないと解らない凄さである。
    自分は、あまり率先してライブを見に行こうとするタイプではないのだが、こういうのを見せ付けられちゃうと、やっぱりライブっていいな、と思ってしまうのであった。

  7. Steve Howe Solo ~To Be Over/Clap
    メンバーが一旦引っ込み、スティーブがアコギを抱えて出てくる。
    大阪公演では怪我をしていてエレアコで弾いたらしいが、怪我が治ったのであろうか、アコギであった。
    1曲目のTo Be Overが凄い。これだけでも今日のコンサートを見に来た価値があるというものだ。
    右手は殆んどカッティングのままで、左手のコードワークだけで複雑な曲を演奏していく。
    これは是非DVDとかで映像化して欲しいステージだ。

    続いてのClapにも感動。観客もノリノリ。
    途中でボディを軽く叩いて"Clap"するところで観客から掛け声が掛かると、「おっ、解ってるじゃん」とでも言いたげにニヤリと笑ってうなづく。本人も、かなり気分よく演奏していた。
    なんでこんなに上手い人が1曲目ではモタモタするのかなあ?イエス永遠の謎だね。

    --休憩--

  8. Jon Anderson Solo ~ チューリップ/Show Me
    15分の休憩のあと、ジョンがギターを抱えて登場。
    「日本語の歌を歌うよ~」と言って、いきなり「ぞー」とワンフレーズだけ弾いたのは「ぞうさん」か?
    改めて弾き出したのはチューリップ。
    「サイター、サイター、チューリップノハナガ、ナーランダー、ナーランダー、アカシロ、キイロー」
    キイローが若干転調してイエス調の曲になっていたのが笑えた。
    「皆さん一緒に歌ってください」というわけで、もう一度。
    「さいたー、さいたー」大合唱になるかと思ったら、客席から全然歌声が聴こえて来ない。
    歌えよ!隣りの客!!
    もうひとつノリが悪い東京の客であった。

    「ここまでしか歌えないよ」
    と、「キイロー」で終わってしまったが、そのあと「♪どの花見ても綺麗だなー」という歌声が客席左側から聴こえてきた。今回は、総じて左側の客席の方が沸いていたようだった。女性が多かったのか?
    ジョンのMCは平易で簡単な単語を使っていて、非常に解りやすかった。
    日本人に配慮してのことだろうか。

    2曲目は、昔作曲していながらどのアルバムにも録音しなかったという Show Me。
    曲の後半でリックが加わり、バックを努めたあと、リックのソロに移行する。

  9. Rick Wakeman Solo
    「ヘンリー8世と6人の妻」お馴染みのフレーズで始まるリックのソロは素晴らしかった。
    ちょっと弾きすぎの嫌いもあったが、キーボードを文字通り伝って弾きまくるリックのプレイは素晴らしいの一言。
    やっぱりイエスにはリック・ウェイクマンは不可欠なのであった。

  10. Heart Of The Sunrise
    激しいギター、ベース、ドラムの連打で始まる名曲。
    アランのドラムがいい感じ。
    イエス・ソングズでは、多分ビル・ブラッフォードのドラムだと思うのだが、この手の曲にはお祭りテンテケ太鼓のビルより、アランのロック・ドラムの方がよく似合う。
    ジョンが引っ込み、後方でマラカスやパーカッションを演奏。ドラをバーン、バーン、バーンと叩くのはアランだと思っていたのだが、ジョンだった。ステージでしか解らない発見である。
    スティーブ、ノリまくり。ギターを抱えて悶え弾く姿は「瀕死の鶏」のようであった。

  11. Long Distance Runaround
    名曲乱れ打ち。時間の経つのが早い!!
    イエスファンとしては、イエス・ソングズでの「もたつき」が気になってしょうがない曲。
    今回は完璧。ちょっとスティーブがずるをしていたかもしれないが、そんな些細なことは気にしないようにすべきである。
    クリスのベースの音が後半から大きくなったような気がして、多少耳障りだったが、これはポジションのせいかもしれない。

  12. Chris and Alan ~ Whitefish/Tempus fugit/On The Silent Wings Of Freedom/Fish


    続いてクリスとアランのソロ。
    さあ!これから俺の時間だぞとばかりに腕まくりするクリスに拍手喝采。
    でも、そのあと4弦を開放でポーン!と弾くだけ。役者やのう。
    スティーブのギターをバックに始まったWhitefish。これまたカッコイイ!!
    ステージ狭しと動き回るクリスに反応する客。だが、センターの客がいまいちなんだよね。
    いい席に座っているのだから、盛り上げるのが1列目の役割である。気難しい顔して聴くなら後の方に行って貰いたいものだ。
    続いてのTempus fugitはアルバム「ドラマ」からの曲。ジョンもリックも居ない時の曲をこんな風に演奏できるのはクリスとアランならではの事だろう。
    立て続けに今度はOn The Silent Wings Of Freedom。
    ベースとドラムだけで曲が成立するとは思わなかった。これは凄い。
    アランの明確なドラムソロが無かったのがちょっと残念だったが、予想以上の出来に大満足。

  13. Awaken
    クリスが引っ込み、リックのキーボードが始まると観客が沸く。「悟りの境地」。
    ジョンの歌声が被さり、イエス全楽曲の中で最大に緊張感あふれる名曲が始まる。
    曲が進行する途中で裏からクリスがのっそりと登場。なんとトリプルネックベースを抱えている。
    6弦(3弦のユニゾン)、4弦、4弦(多分フレットレス)という化け物ベースを爪弾くクリスはまるでクジラかグリズリーのような様相。
    ジョンがミニ・ハープを弾き、アランの方を向いて6弦ベースを弾くクリスをバックに、リックのプレイが始まる。
    「ヘンリー8世」も良かったが、ここでのリックのプレイは物凄かった。
    開演前、ちゃっちいと思っていたステージが、いつのまにか広く暗い深海になっていた。
    派手なステージセットが無くても、演奏と最小限のライティングだけで見せることは出来るのである。
    スティーブは最初、ヘッドレスのギターを抱えていたが、途中からテレキャスターにスイッチ。
    やっぱりAwakenはテレキャスだよなあ!!
    壮大で荘厳なラスト。アルバムでは完璧な演奏だったが、それに勝るとも劣らぬ素晴らしい演奏だった。

    演奏後、お得意の「ベース一回転はずし」が出来ず、リックに「脱がせて」貰っていたクリスの姿がユーモラスであった。

    --アンコール--

  14. Owner of a Lonely Heart
    そしてアンコール。
    「今日は特別なリクエストがあったので、それをやります。今回、始めて演奏する曲です」というジョンのMCがあったかと思ったら、、、
    ♪デーデデッデデー
    あのイントロが!ロンリーハートだ!!うぉぉぉぉぉ!!!!

    I've Seen All Good Peopleだと思っていたのでビックリ、嬉しい!!
    リックが多少ミスったり、スティーブのギターはオリジナルと全然違った「スティーブ節」だったけど、これはこれで最高。
    曲の途中でジョンがステージの袖で見ていた女性と抱き合って踊っていたが、あれは奥さんだろうか?
    (このシーン、ひょっとしたらラウンドアバウトの方だったかもしれない)

    でも、客の反応は真っ二つ。
    総立ちで盛り上がる周辺の客に対して、一応立ってはいるけれど腕組みしてシニカルに聴いている真ん中の前5列。
    ダメだなあ、日本の観客は。この5人が、この曲をやってしまう事の意味をもうちょっと考えて欲しい。
    過去色々な確執で分裂し、再度めぐり合い、また分かれ、ある意味で自分に忠実でありながら、他人に妥協せず、わが道を通してきた5人のメンバーが、年を経て再びめぐり合ったことの意味。
    売名行為と言うなかれ。これが今のイエスである。
    イエス、すなわち「肯定」。
    このバンドは過去、否定することからスタートしていた時代があった。
    それを全て払拭して、全てにおいて肯定するバンドになった、という事だ。
    だから、我々も、彼らが演奏する全てを肯定しなければならない。
    失敗でも前向きにイエス。
    Tempus fugit「光陰矢の如し」イエス。

  15. Roundabout
    スティーブの印象的なソロで始まるイントロではなく、ポップなリズムから急に導入部のフレーズに入ったのでちょっと驚いた。
    イエスお決まりのナンバー、ラウンドアバウト。
    もう語るべきことは無い。凄かった。素晴らしかった。
    ステージが始まる前の不安はどこへやら。
    パワフルな老人達のパワフルなステージを堪能した。
    あと何年、このステージが出来るかわからないが、来年もまた、来日して欲しいと思わせるコンサートであった。

全ての演奏が終了した。メンバー5人が揃って挨拶。
リックとクリスが肩を抱き合って挨拶。本当にこの二人は仲がよい。演奏のあとでも、ハイタッチとかしてたし。
アランが初めてステージ前方へ出てくる。目の下に隈が。お疲れさんでした。
客席から何かが投げ込まれる。「三越の紙袋」だ!!
それを拾って観客に応えるジョン。あの袋の中身は何だったんだろう?
ステージが終わり、ホールを後にした我々は、東京駅の地下街で食事をして帰宅。
その途中で阪神の優勝を知った。
世の中の阪神ファンには特別な日であったと思うが、私にとっても、特別な日になった。