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●紫電改のタカ / ちばてつや

講談社発行 全6巻 (講談社漫画文庫:全4巻)
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【滝城太郎のカッコよさに痺れろ】

戦記マンガといえば、松本零士とか新谷かおるなんかが有名ですが、私が好きだったのは何と言っても、ちばてつやの「紫電改のタカ」です。
「紫電改のタカ」は人間ドラマです。
いわゆる「戦争礼賛マンガ」でも「戦争反対マンガ」でもありません。
我々世代は、薄っぺらい教育ママゴン(超死語)のおかげで、一時期戦争マンガ禁止、プラモデル禁止というとてつもない時代を経験したことがありました。
戦争マンガ=危険思想だというのです。
子供にそんなものを読ませて軍事オタクになったら大変だというのでした。
馬鹿も休み休み言って欲しいもの。
人間の歴史は戦争の歴史です。戦記物を読んじゃいけないのなら、世界史も日本史もダメなんじゃないでしょうか?

プラモデルは組み立てるだけなので創造性が無いからダメ。
特に戦車や戦闘機のプラモデルは軍国主義を助長させるからダメ。
こんな冗談のような非道がまかり通っていた時代があったのです。今でも大差ないのかもしれないですが。

どんな世の中になっても、残念ながら戦争は無くならないと思う。反戦を身上とし、世の中に反戦を訴えていくことは大切な事だと思いますが、だから戦記マンガは読むなというのは暴言ではないでしょうか。
むしろ、戦争をしてもらいたくないからこそ、こういうマンガを、私は現代の子供たちに読んで欲しいのです。

難しいことは解らなくて良い。

子供だから、難しいことが解る必要は無い。純粋であれば良い。

だから、黒い紫電改がカッコいいと思えばそれでいいではないでしょうか。紫電改よりタイガー・モスキトンのP-51の方がカッコいいと思ったっていい。モスキトンは32機も日本の飛行機を撃墜しますが、それでもカッコいいものはカッコいいと思うことに問題はないと思います。

滝城太郎はカッコいいけど、最後にお母さんや恋人と会わずに出撃していくのはとても悲しい。

マンガでは最後の死まで直接描いてはいませんが、おそらく滝は散ったに違いないでしょう。それを感じて涙すれば良いのです。そこに必要なのは反戦の気持ちではありません。ただ単に悲しいという感情だけがあれば良いのです。そうして、数十年後に読み直し、また新たな思いに馳せれば良いのではないでしょうか。

戦闘機をカッコ良いと感じる感性は、決して戦争礼賛に繋がる感情ではありません。戦闘機や戦車が好きだからと言って、イコール戦争肯定にはならないと思っています。
そういう事が解らない感受性の鈍い人が、最近多くなってきたように感じています。

カッコよさ、カッコ悪さ、楽しい、悲しい、嬉しい、寂しい、そういう感情をストレートに出せない人間が、凶悪犯罪を起こしているように思うのは気のせいでしょうか。見て、感じることを否定してはいけない。こういうものはどんどん子供に見せるべきです。そうして、色々なことをストレートな感情で表わし、その中から正しいものを見極める力を養っていく事が重要であると思います。若い子供たちに、是非「紫電改のタカ」を読んで貰い、単純に憧れを持ち、単純に悲しんで欲しいと願って止みません。