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●サブマリン707 / 小沢さとる

秋田書店発行 全6巻
※残念ながら現在では廃刊のようです。

【潜水艦マンガは奥が深いのだ】

昭和42年から43年にかけて発行された秋田書店サンデーコミックスのひとつ。
昭和30年代から40年代生まれの男性にとって、サブマリン707といえば海洋コミックスの傑作として、広くその名を知られているマンガのひとつでしょう。
旧式潜水艦の707号と、その乗組員の物語ですが、時代考証とか自衛隊の存在うんぬんと言ったような小難しい話は抜きにして、今読んでもむっちゃくちゃ面白いのです。

正直言って、昔のマンガだからといってタカを括っておりましたが、40歳を過ぎた今読み返しても結構面白いというのは、このマンガがいかに優れたものであったかを証明していると言えましょう。
ストーリーは、あって無いようなものです。奇想天外な話が多く、それは子供向けマンガだから仕方ないことだと思います。

サブマリン707が今読んでも面白いと感じるのは、非常にまじめに、しかも執拗に書かれた戦闘シーンにあるのです。海底では、外を目視することが出来ません。だから、相手を探るのはソナーの音のみ。身を隠すためには物音ひとつ立ててはいけない!
一旦右に回避行動を取ったら、そう簡単には反転できません。
迫り来る魚雷。避けられるのか、衝突するのか。
その緊張感がひしひしと伝わって来ます。
この緊張感こそが、このマンガの醍醐味なのです。

たとえば、このサブマリン707を映像化したとします。(実際にOVAとかがあるようですが未見)延々と続く潜水艦同士の戦いは、多分冗長的に思うでしょう。
水中を動く潜水艦は、動きが遅いし、魚雷を避ける行動なんかものろくて、多分アニメを見ても子供たちは飽きてしまう可能性があります。

ところが、これをマンガで延々と続けると実に面白い。このあたりが、紙媒体によるマンガの醍醐味と言えるのではないでしょうか。

私は、初代の旧式707号のファンでしたが、第二次世界大戦中に沈没した米潜水艦コッド・フィッシュ号とムウ帝国の人々を描いた「なぞのムウ潜団の巻」で、あえなく無人潜水艦の魚雷のえじきとなってしまいました。
707二世号は、ジュニアを船体内に格納できるなど、かなりカッコいい新鋭艦でしたが、ロープでジュニアを括りつける旧型707号の方がカッコ良いと思ったのは私だけでしょうか。私は子供の頃から渋好みだったんでしょうかねえ。

今、読み返して分かったことが幾つかあります。
まず、絵が「横山光輝」と「石ノ森章太郎」に似ているということ。
小沢さとる氏が、いずれかの巨匠のアシスタントを勤めていたかどうかは不明ですが、この絵柄がまた実に良いのです。適当にアレンジされていて、劇画のような精密感が無い。それが、マンガとしての面白さを助長しています。
(後になって知ったのですが、なんとアシスタントが殆んどの絵を描いていた事もあるんだとか!)

現代の映画やマンガでは、やたらに精密感を煽ったり、CGを駆使していかにも本物のような映像を作っているものが多いのですが、これらのCG画像は薄っぺらで奥がありません。
むしろ、着ぐるみの怪獣とかミニチュアで作った飛行機とかの方が、作り物だと分かっているだけに、それを映像化したときに意識的に自分の中で想像力を働かせることが出来るのです。

完璧なCGには想像力を働かせる余地がありません。だから、つまらないのです。
サブマリン707は、後日707Fという形で小沢さとる自身が続編を書いていますが、絵が劇画調になってしまい、「横山」風の絵が全く姿を消してしまいました。
このマンガも読んでみましたが、オリジナルの707ほどの興奮と面白さは、残念ながら体感できなかったのです。
現在では入手困難なようですが、是非復刻を望みたい本のひとつです。
また、筆者には同じサンデーコミックスから出ていた「青の6号」という潜水艦マンガもありましたが、こちらのほうは荒唐無稽すぎていて、私にはちょっと面白くありませんでした。