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●怪奇骨董音楽箱 / ジェネシス

  1. The Musical Box
  2. For Absent Friends
  3. The Return of The Giant Hogweed
  4. Seven Stones
  5. Harold The Barrel
  6. Harlequin
  7. The Fountain of Salmacis


  • Peter Gabriel / vocal
  • Steve Hackett / guitars
  • Tony Banks / keyboards
  • Mike Rutherford / bass
  • Phil Collins / Drums

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そして2人が加わった。

Genesisは、1969年、In The Beginningというアルバムでデビューするが、その当時は何か不思議なイメージのサイケデリック・ポップバンドという位置づけでしかなかった。
セカンドアルバムのTrespassに於いて、プログレ傾向のサウンドに目覚めた彼らは、3作目にあたる本作で完全にプログレッシブ・ロックとしてのスタイルを確立する。
その最大の理由は、ギターにSteve Hackett、ドラムにPhil Collinsを迎えたからと言っていいだろう。

変拍子を巧みに操るPhil Collinsのドラムに、押さえ気味ながらかぶさるSteve Hackettのギターと、圧倒的なTony Banksのオルガン。初期Genesisの基本的サウンドは、このアルバムで方向づけられている。
そこに乗っかってくるPeter Gabrielの憂いを帯びたボーカルがまた秀逸である。
私は、Peter GabrielについてはGenesis時代よりもソロになってからの方を評価しているのだが、このように改めて聴いてみると、Genesis時代も捨てたもんじゃないなあ、という気がする。

恐らく間違いなく、初めてGenesisに接する人は、このアルバムを聴いても冗長的な感じがするだけだろう。
だが、ある程度Genesisに触れ、聴き込んだ人ならば、このアルバムの良さがより一層堪能できるものと思う。
音は荒削りな感じがするし、今改めて聴くとオルガンの音やギターの音が古臭い。だが、これこそ初期Genesisの音なのである。

このアルバムの原題はNursery Crymeという造語で、これは間違いなくNursery Rhymesをもじったものである。ナーサリーライムと言っても我々日本人には耳なじみが薄いが、いわゆるマザーグースの童謡のことだ。クライムはCrime(犯罪)に通じるから、童謡という意味から一転して暗い悪の匂いがしてくる。

そういう意味でも、怪奇骨董音楽箱という邦題は言いえて妙で、この時代は洋楽のLPには必ず邦題が付けられたものであるが、なかなかイカシたタイトルを付けたもんだ。
Pink FloydThe Darkside of The Moon(月の裏側)を「狂気」と訳してしまうセンスなどはぶっ飛んでいる。「原子心母」も凄いと思ったが、あれは直訳だった。

ところで、初期GenesisのジャケットデザインはPaul Whiteheadという作家の作品なのだが、初期Genesisのイメージを端的に表現していてとても好きである。本作のジャケットは、白い服を着た看護婦のような女性が人形の頭を使ってクロッケーをしているという不気味なもの。このジャケットと、「怪奇骨董音楽箱」という邦題が相まって、実に不気味で暗い印象を与えている。バンドロゴも悪くない。

実はこのアルバムが日本で発売された当時、各曲にも邦題が付けられていた。
1曲目のThe Musical Boxは「怪奇のオルゴール」、2曲目のFor Absent Friendsは「今いない友のために」、6曲目のHarlequinは「道化師」、7曲目のThe Fountain Of Salmacisは「サルマシスの泉」となっていた。
秀逸なのはやはり1曲目の「怪奇のオルゴール」だろう。ジャケットの絵はこの曲をモチーフにしている。歌詞の内容は、クロッケーをしていた少女が男の子の頭を打ってしまい、その頭がオルゴールから出てくるという内容の不気味な曲になっている。このタイトルは、詩をしっかり読んでいないと出てこないフレーズだ。

Peter Gabrielの書く詩は、さほど難解でも哲学的でもない。
全体的に不思議の国のアリスに見られるような不思議な寓話という感じに仕上がっているのは、プログレを妙に難解にしがちな多くのバンドの姿勢と比較して好感が持てる。

曲はどれも甲乙付けがたいが、やはり1曲目のThe Musical Boxと最後のThe Fountain Of Salmacisだろうか。
短い曲だが、雀坊堂はHarold The Barrelも結構好き。