筆者の購入したDVDや本、鑑賞した映画、テレビ番組、コンサート等のインプレッションを書いています。
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●2005年11月12日中席 新宿末広亭

新宿末広亭の寄席に行って来ました。
これは、自分自身の備忘録を兼ねたインプレッションです。
一部の噺には、あらすじを付けておいたので参考にして下さい。

  • はじめに
    実は寄席大好きなのである。 独身時代&新宿勤務時代には良く末広亭に通ったものであった。 しかし、勤務地が変わり、結婚するに至って、ほとんど寄席通いはしなくなってしまった。 今回、友人の発案によって寄席を見に行く事になった。自分自身、10年ぶりくらいの寄席である。
  • 寸評
    1. 古今亭章五「狸の札」 前座。トリを勤める志ん五の弟子。 そこそこ話せる。二つ目昇進も目の前であろう。

    2. 古今亭志ん公「寿限無」
      こちらも志ん五の弟子だそうである。かなりの早口で、寿限無のフルネームを超早口で端折るのがちょっと気になったかな。
      そこが面白くもあったので、難しいところである。内容は悪くない。

    3. 鏡仙一(太神楽曲芸)
      相方の仙花抜きの一人芸。地味ではあったが、そこそこ上手くて安定している。
      顔が私の同僚に似ていたので妙に笑ってしまった。

    4. 林家ひろ木「麻里寺(マリッジ)結婚相談所」
      木久蔵の6番弟子。二つ目昇進記念だとかいう割には上手くない。
      まあ、木久蔵門下って事だから落語には期待出来ないのだが、話の内容ば馬鹿馬鹿しくて結構笑える。マクラで噛みすぎ。頼りないのを味にしているのだとしたら、その演出は失敗だ。

      <麻里寺(マリッジ)結婚相談所:新作>
      どうしようもない男が結婚相談所に行き、言いたい放題の事を言って女性を紹介してもらおうとする。
      箸にも棒にも掛からないと思いきや、一人だけ該当者が居る。
      ちょっと年上ですが、如何ですか?と言われるが、いや、それだけは駄目だと拒否。
      どうして駄目なんですと聴くと、
      「その人は私の母親です」

    5. 古今亭志ん馬「時そば」
      志ん朝の弟子。「寿限無」といい「時そば」といいスタンダードな古典が続くのは土曜日だからだろうか。
      内容的にはそつなくこなしていた感じ。

    6. ロケット団(漫才)
      寄席に出てくる漫才師は、いわゆるニューウエーブ系ではなく、オールドウェーブのしゃべくり漫才である。こういうのが好きな私にはたまらなく面白かった。
      ネタ的にはツービート系の毒舌漫才であるが、嫌味が無い。その分、毒も無いが、寄席で聴く漫才はこのくらいで良いかも。

    7. 柳家喬太郎「胸焼け手術」
      20世紀最後の真打。噂どおりの実力派で、安心して聞けた。風邪を引いていて声がガラガラだったのが残念である。
      話は面白かったが、この人、私より年下だって事に気がついて猛然と萎える。

      <胸焼け手術:新作>
      医者に行くといきなり手術され、内臓を全部摘出されて綿を詰められてしまう。
      そんな状態なのに全快し、快気祝いに友人たちと酒を飲む。
      体内の綿にアルコールが染み込み、そこで吸った煙草の火ダネを吸い込んでしまい、体内の綿に引火してしまう。
      七転八倒する男に友人がどうしたかと聴くと、
      「いやあ、胸焼けがする」

    8. 金原亭馬生「粗忽の釘」
      これまた定番である。粗忽者の夫婦がタライの中で全裸で洗いあうというバカな場面がある。
      この場面は古今亭一門(金原亭も古今亭一門)のオリジナルなのだそうだ。
      馬生といえば10代目の印象が強すぎるかなあ?既に襲名後6年くらい経っているが馬生の名はちょいと重いか。

    9. 花島世津子(奇術)
      寄席の奇術は辛い。
      誰も驚かないし、ネタも割れてるし。拍手も少ないし。
      そんな聴衆を飄々とした感じで流していた。
      最後の新聞紙の奇術は、細かく千切ってエイヤッとやると元通りになっちゃうっていう定番なんだけど、元に戻った新聞も千切る新聞も、同じ紙面にしておいて欲しかったなあ。(千切るほうは日経で、元通りになったらスポーツ新聞になっちゃった)

    10. 三遊亭歌司(漫談)
      師匠(歌奴)についていた頃の思い出話などを中心にした話。落語ではなく漫談のようなものである。
      中々面白い話が多かったが、特に「身体検査に薄めた番茶をコッソリ持ち込み、検尿用の紙コップに並々と注いで、看護婦さんから「多すぎますよ!」と言われたら目の前で半分飲み干す、ってのを一度やってみたい」っていう話には場内大爆笑。
      いやー、これイイよ。是非誰かやってください。

    11. 金原亭伯楽「猫の皿」
      金原亭は馬の名前を付けるのが通例だが、馬にちなんで馬の文字の無い「伯楽」という高座名にしたという話は、なるほどそうかと納得したのだが(伯楽とは馬の良否を見分ける名人のこと)、今更落語協会の分裂騒動を本にしたりしていて、またそれを高座から宣伝するのが嫌な感じであった。
      馬生の名が継げなかったのが悔しかったのだろうか。
      くだんの本は昨年読んでいて、小説なので誰も実名は登場しないのだが、誰だかすぐに分かってしまう。談志に対する批判が痛烈だという印象しかなく、結局は志ん朝の協会復帰に自分も一役買ったと言いたかっただけのような本である。
      噺の中にもそういう感性が見えてしまうのか、良い印象は無かった。

      <猫の皿>
      骨董品屋が地方周りを終えて八王子へ辿り着く。
      茶屋で茶を飲んでいると猫が餌を食っているのだが、その皿がなんと高麗の梅鉢という逸品。
      売ったら300両くらいになるという代物だ。
      骨董屋は一計を案じて、茶屋のあるじに猫を売ってくれと頼む。
      3両という高額な値段で商談成立。そこで骨董屋が一言、
      「猫っていうのは、皿が変わるとメシを食わないっていうから、この皿持っていって、これで食わせてやろう」というと、それはお売り出来ませんという。
      なぜかと聴くと、
      「それは、こんなところに置いてありますが、高麗の梅鉢と言いまして、300両くらいにはなるんです」
      と言う。
      それじゃあ、どうしてそんな高価な皿で猫に飯なんか食わせるんだい?と聴くと、あるじ曰く、
      「へぇ、そうしておくと、時々猫が3両で売れますんで」

      中入り

    12. 古今亭菊之丞「町内の若い衆」
      女形のような印象の噺家である。従って奥さん役が妙に板についている。
      この人ならではの噺であろう。意外と珍しい噺ではないかと思ったが、最近の若手は良く取り上げているようだ。内容はニヤリとする艶噺。こういうネタが中入り直後というのも良い感じ。

      <町内の若い衆>
      熊さんが兄貴分の家を訪ねると建て増しをしている。
      奥さんに「さすが兄貴は偉いねえ!」と褒めると、
      「いえ、これは町内の若い衆が寄ってたかってこしらえてくれたようなもんで」と謙遜する。
      その奥さんに感動した熊さんは、自分の女房にも同じような事を言わそうと、友人に頼んで自分の留守に女房のところへ行って貰う。
      友人は何とか褒めようとするが、熊さんには褒めるようなものが無い。
      ひょんな事から熊の女房が妊娠中だという事が分かり、
      「この不景気に子供を作るなんて、やっぱり熊さんは偉いねえ!」と褒めると、熊の女房曰く、、、
      「いえ、これは町内の若い衆が寄ってたかって・・・」

    13. 笑組(漫才)
      数少ない桂子・好江師匠の弟子。
      蛍光グリーンの背広のデブと、大胆なデザインの白黒背広のメガネというコンビ。
      蛍光グリーンにオレンジの靴下でメロンをイメージしたというくだりと、ダブルの背広のボタンが締まらずトリプルになっちゃってるというネタが笑えた。

    14. 柳亭左楽(入船亭扇橋の代演) 「馬のす」
      いきなり代演はやり難くて・・・というマクラから始まって、どうなることかと思ったが中々の出来。
      この噺はサゲがいまいちなので、途中が大事なのだが、枝豆の食い方など、そこそこ上手かった。

    15. 桂文生(春風亭一朝の代演) 「転失気(てんしき)」
      本日二人目の代演。高座では結構代演が続くことがある。
      文生は初めて聴いたが、禿頭だけあって寺の坊主の話など良く似合っている。
      転失気も、もちろん和尚さんと小僧が主人公の話だ。オチには何種類かあるようだが、今回のオチはいまひとつだったかなあ?

      <転失気>
      転失気とはオナラのことである。
      医者に行った和尚さん、医者に「転失気はありますか?」と聴かれて生返事。
      その意味が分からなかったので、知らないことを隠して小僧さんに聴いてこさせる。
      しかし、近所の連中も知らない。
      そこでお医者に聴きに行かせるが、オナラの事だと知った小僧さん、和尚さんには本当の事を言わないで、「転失気とは杯のことです」と嘘をつく。
      医者と和尚との珍妙な会話に腹を抱えて笑い転げる小僧さん。
      騙されたと気がついた和尚さんだが、何とか誤魔化さねばならない。
      どういうわけで寺では杯をテンシキと言うのですか?と問われて、
      「この杯をかさねますと、ブーブー文句を云うやつがいる」

    16. 三遊亭小円歌(俗曲)
      「友奴」「かんちろりん」「見せ物小屋」
      最後はリクエストに答えて「芸者さん(節は「奴さん」)で踊りを披露。
      大トリ前の三味線による小粋な出し物。江戸情緒たっぷりだねえ。
      同席していた友人は三味線もやるので、小円歌さんの三味線の上手さにしきりに感動していた。
      私は三味線は良く分からないが、「芸者さん」の踊りは流石に上手かった。

    17. 古今亭志ん五「素人義太夫」
      本日の主任。志ん五の高座は始めてであったが、非常に上手い。
      素人義太夫という噺は、義太夫に凝った旦那が近所の連中に自分の義太夫を聴かせるのであるが、あまりに下手なので誰も聴きたがらない。
      そこで一人ずつ仮病やら用事やらの嘘を吐いて旦那の義太夫を聴かないで済むようにするのであるが、噺が進んでいくごとに旦那の義太夫の破壊力があからさまになっていく。
      その描写のエスカレートぶりが笑える。

    以上、約4時間に渡る、末広亭の高座であった。
    テレビなどで著名な落語家がほとんど出なかった分、むしろ知る人ぞ知るといった感じの芸人ぞろいだったので、大変満足した。
    次は浅草かな?
    なお、このコラムを書くにあたって、企画したじゃがいもポン子さんと、演目の表題などを教えて頂いた胡瓜畑蓮池さんに厚くお礼申し上げます。