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●劇団「Sold Out Sorry」13回公演「天使の大泥棒~優しさに抱かれたロスタイム~」

2005年11月7日 中野 WESTEND STUDIO

劇団「Sold Out Sorry」の第13回公演「天使の大泥棒~優しさに抱かれたロスタイム~」を見に行ってきました。
これは、自分自身の備忘録を兼ねたインプレッションです。

  • はじめに
    はじめに断ってしまうが、実は芝居というヤツが苦手である。 リアリズムを追求するなら、映画には適わない。 様式美にこだわるなら、バレエやミュージカルのほうが上。 だと思ってしまうからだ。 演劇の魅力というものは「生」に尽きるのであろうが、音楽のライブステージなどとは違って何回も見に行くほどの興味は無いので、その公演の出来が悪ければ、そんなもんなんだと思ってしまう危険性を孕んでいる。 そういう全てをひっくるめて、芝居というものは面白いのだと言う事も出来るだろうが、残念ながら現在の私ではその境地に達するのは難しいようだ。 では何故、今回このような小劇団の公演を見に行ったかというと、出演者の一人が知り合いだったからである。 しかし、知り合いが出ているからといって批評を甘くしたりはしない。 演劇好きではない人間の評価なので、かなり手厳しい部分もあるかと思うが、ご了承頂きたいと思う。

  • あらすじ
    多くの人が見られるものではないので、簡単なあらすじを書いておく。
    美術品専門の窃盗犯が骨肉腫を患い余命3ヶ月となり、末期患者だけを収容するホスピスに入院する。
    そのホスピスには、既に3人の患者が入院していた。
    末期癌の患者2人は、お互いの余命を知りながら恋人同士の付き合いをしている。
    もう一人の患者は、自分が余命3ヶ月であることを知らされていない。そのため、余命を知っている妻に辛く当たる。
    そんな環境の中に、傍若無人な態度を取る窃盗犯が入っていく。
    あまりにもヤクザで品性の無い態度を繰り返すので、お付きの女性看護師からは嫌われてしまう。
    彼が何故その病院に入ったかというと、実は彼の父親と、その病院の元院長は一人の女性を争った間柄であり、その恋の争奪戦に勝利したのは彼の父のほうであった。
    そのつてを頼って入院して来たというわけである。
    現在の院長は、元院長の息子であり、その事情を知らないために、窃盗犯を病院から追い出そうとする。

    ところで、この窃盗犯が盗む美術品は全て、今は亡き父が描いた絵だけであった。
    そうして、父の最後の作品という、亡き母を描いた「微笑みのマリア」という作品を探し続けている半ばで、不治の病に冒されたというわけである。
    また、主題とは直接関係のないサイドストーリーも豊富にちりばめられている。
    恋人同士の患者たちは、自分たちの体が動く間に、2人だけで温泉旅行に行こうと計画する。
    周囲の反対を押し切って、二人だけで旅行に行き、アクシデントのために2人ともその場で死んでしまうのだが、寄り添い、微笑みを浮かべた満足そうな死に顔であった。

    一方、自分の病名告知をされていない患者(学校の先生)は、なかなか直らない病気に苦悩し、そのために妻に多大な負担をかけるようになっていく。悩みぬいた妻の決断で病名と、残りの人生を告知されてから、ようやく自分の立場について納得し、前向きに余生を生きる気力を生み出すことが出来るようになった。
    窃盗犯には子分(女性)が居て、彼女はある展示会に「微笑みのマリア」が出品されるという情報を得て、窃盗犯のために盗みに行く事を画策する。
    情報提供者の泥棒仲間と会場に忍び込むが、泥棒仲間は実は囮捜査官だった。
    「微笑のマリア」などは展示されておらず、完全な罠だったのだ。子分は、その場で現行犯逮捕されてしまう。
    子分が逮捕されたという情報を耳にした窃盗犯は、気力を無くし、死期が近づき、立ち上がれないくらいに衰弱していく。
    仲が悪かった看護師の女性も、死期が近づくにつれ次第に心を交わすようになっていき、献身的な介護を続ける。

    そんなとき、ヘルパーの女性の何気ない会話から、求めていた「微笑みのマリア」が、病院の院長の自宅にあるという情報を掴んだ。
    既に立ち上がれないくらいに衰弱していた窃盗犯であったが、その夜忽然と病院から姿を消してしまう。
    数日後、看護師が脱走した窃盗犯の寝ていたベッドを片付けていると、毛布の下に盗まれたはずの「微笑みのマリア」が隠されているのを発見する。
    そこには、絵の収まった額縁の上から「参上」の文字が書かれていた。

  • 寸評
    ストーリーの出来、不出来について評しても仕方ないので、そういう部分については一切論評は差し控える。

    こういった小劇団の公演の意味と目的というのはいったい何なんだろう?
    特にオリジナルストーリーとなると、その意味を見出す事が難しい。
    結局のところ、発表会なのであろうか。赤字は出していないそうだが、この公演だけで食っていく事はありえない。
    観客も知り合いや、他の交流のある劇団員が見に来る場合が多いのではないか。それならばますます発表会なのだな。
    だから出演者をちょっと知っているくらいの関係の観客が、こういう芝居をどう見たのか、という点についてのみ、集約して寸評を書き加えたいと思う。

    まず、上演時間2時間という長い芝居に、上演前は一抹の不安を感じていた。
    この手の小劇団の演劇にありがちな、「何だかよく分からない芝居」を2時間も見させられるのは苦痛だな、と思ってしまったのである。
    しかし、この公演はテーマこそ暗い題材だが、比較的分かりやすく退屈しない2時間であった。この点は評価したい。
    だがやはり2時間は長かったのではないだろうか。
    あらすじを読んでも分かると思うが、色々なエピソードがちりばめられ、かつ複雑に入り組んでいるので、非常に分かりにくい。
    子分のエピソードは余計ではなかっただろうか。冒頭の、主人公との掛け合いも無意味。

    無意味といえば、このような芝居というのは何故、すべりまくりの小ギャグをちりばめるのであろうか。
    こういう芝居というのは、そういうものを入れるのがお決まりなのかもしれないが、全然面白くない駄洒落や小芝居を延々と見せられるのは苦痛だ。
    この調子で面白くない駄洒落や恥ずかしい小芝居が続くのなら、申し訳ないが帰ろうと思ったのも正直なところである。金を払って2時間も下らないギャグに付き合わされるのはたまらない。
    だが、内容がシリアスだったため、その手のギャグが控えめだったのが私には幸いした。
    冒頭のシーンでの子分役の人は滑舌が悪く、台詞が聞き取りにくかった。そういう人がギャグをやると全く受けない。
    後で、出演者の知り合いに聞いたところ、この子分役の人はなかなか役作りが出来なくて、ギャグも出来なかったらしいのだが、それならばバッサリと切るという手があっても良かったのではないかと思う。
    冒頭のシーンと、続く末期患者の恋人同士の会話がギャグすべりまくりで、先行きが不安になってしまった。

    この演目は初演だそうだが、もう少し脚本を練る必要があるだろう。
    余計な部分をもっと削ぎ落とし、主題を明確にして分かりやすくすれば結構面白くなるし、見ごたえのあるドラマに仕上がると思う。
    もう2度と見られない演目かもしれないが、劇団の規模に関係なく、その劇団が自分たちの公演のレベルを上げていくのを目指すとするならば、やはりよく出来た脚本を何度も見直し、煮詰めていき、その劇団の看板公演となるような演目を1つか2つ決め、それを定期的にやっていく方が良いのではないかと思ったりする。
    今回の脚本は、そういう意味で練り込まれておらず、不必要なシーンや会話がかなりあった。
    ここを削れば上演時間も1時間ちょっとになると思うし、締まった芝居になると思うのだが、如何なものだろうか。

    一方、素晴らしかったのが舞台装置で、病室の作りなど、このクラスの小劇団では考えられないほどしっかりしたものであった。
    この舞台装置を担当した人は、以前ドリフの大道具を担当していたそうで、なるほどそれならば納得がいく。
    ドリフをやってたのなら、予算が許せば回り舞台をやりたかっただろうなあ。
    出演者の中では刑事役の男性が一番良かった。
    特に、病室のドアが閉まらなくなるというアクシデントがあったのだが、巧妙なアドリブで逃げ切ったのは流石であった。
    あのようなトラブルが発生すると、自分で直そうとして余計な時間を消費し、芝居のリズムが壊れてしまうものだが、それを逆に利用して適度なアドリブをちりばめ、自分で直そうとせずに裏方(看護師)を呼び、修理はその人に任せて自分の芝居に復帰した判断には拍手喝采ものであった。
    その他のシーンでもギャグは滑らなかったし、唯一笑いを取れていた。
    ギャグはこの人だけに集約し、あとの出演者は基本的に全てシリアスな演技に徹したほうが良かったと思う。そのほうがさらにこの人のギャグが引き立つ。
    また、もう一人、芝居そのものは普通だったけれども、男性看護師役の男の子が、いかにも「こういう看護師って居るよなあ~」と思わせるくらいハマっていて、印象が良かった。あとは女性看護師もなかなか上手かったのではないかと思う。

    その他の出演者は、台詞を噛んでしまう場面がかなり見られ、それが結構重要な場面もあっただっただけに惜しいと思った。
    私が良いと思った刑事役の男性と看護師役の男性は二人とも客演だそうだが、今回の芝居の中で非常に良かった二人が揃って客演というのはどういう事なのよ?
    下手ではないのだが、4人の患者役の人たちは、いずれも余命3ヶ月とは思えないくらい元気で違和感を感じてしまった。まあそれは芝居だから仕方ないことであるのだが、もうちょっとメイクに気を使うなどして顔だけでも雰囲気を作ったほうが良かったのではないだろうか。
    恋人役の2名は、実は相当な年齢の役どころであったらしい。しかし、演じているのが20代、30代の人なので、若く見えてしまった。
    もう少し老けて見える衣装とかメイクにした方が良いだろう。
    ラストシーンで、絵を見つけた女性看護師が、ヘルパーの女の子にその絵を見せて幕となるのだが、絵に描かれた「参上」の文字が客席からはほとんど見えなかった。
    芝居が終わって引き上げるときに、舞台上を見たら、絵の上に「参上」の文字があったのに気づいたという程度である。
    ここは結構重要なポイントだと思うので、もうちょっと分かりやすい表現にするか、目立つような工夫が必要だったのではないだろうか?
    いずれにしても、久しぶりに見た小劇団の演劇であった。言いたい放題書いてしまったが、このクラスの演劇の中では、かなり楽しめたという点については十分に評価しておきたいと思う。