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●太陽と戦慄 / キング・クリムゾン

Lark's Tongues in Aspic / King Crimson




  1. Larks' Tongues In Aspic, Part One / 太陽と戦慄パートI
  2. Book Of Saturday / 土曜日の本
  3. Exiles / 放浪者
  4. Easy Money / イージー・マネー
  5. The Talking Drum / トーキング・ドラム
  6. Larks' Tongues In Aspic, Part Two / 太陽と戦慄パートII




  • David Cross / Violin,Viola,Mellotron
  • Robert Fripp / Guitar, Mellotron,Devices
  • John Wetton / Bass,Vocals
  • Bill Bruford / Drums
  • Jamie Muir / Percussion,Allsorts

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2006年、紙ジャケット仕様再発売中


キングクリムゾン史上最高の出来!

雀坊堂が数あるクリムゾンのアルバムの中で一番良いと思うのが本作である。
原題「Lark's Tongues in Aspic」(直訳すると「ひばりの舌のゼリー」)という非常に奇妙なタイトルは、元々はメンバーの一人Jamie Muirが、彼らの音楽について「ひばりの舌のゼリーのようなもの」 と発言したことをヒントにしたようだ。
真意は不明だが、単純に考えれば「音の寄せ集めのゼリー」という程度の意味合いだろうか。Aspicはフランス語読みすると「毒蛇」になるそうで、「ひばりの舌」という弱者と「毒蛇」の強者の対比、ジャケットデザインの「太陽」と「月」の対比など、陰と陽の対比をモチーフにしたアルバムであるという解釈が、多くの評論家の間でなされているようだ。
Robert Frippが当時傾倒していた白魔術や錬金術といったキイ・ワードを駆使して解説している人も居るようだが、自分にはそのあたりの知識が無いので、そのような考え方は出来るだけ排除したい。

一方、太陽と月のジャケットから、陰・陽の対比を重視し、タイトルは男性器と女性器の結合を意味するなどという馬鹿な(失礼)説を真面目に説いている人も居るが、それは考えすぎというものではないだろうか。
もちろん、ジャケットから連想される陰・陽の対比は充分に想定出来るが、それがどう音に反映しているかがさっぱり理解出来ないのだ。
陰・陽のメリハリを感じるような音作りではない。だから、そのあたりの考え方というものがどうもしっくり来ない。
陰・陽の対比ではなく、陰・陽が合体しているわけだから、それこそ「ごった煮」「音の寄せ集めのゼリー」という文字通りの解釈のほうがすっきりするのではないだろうか。
Robert Frippの、後年に発言している言い訳めいた内容や、無理やり取ってつけたような小難しい難解な解説を鵜呑みにしてはいけない。
あんまり深く考えてないと思うよ、当時は。

でもって、これを「太陽と戦慄」というわけの分からない日本語タイトルにしてしまったのがまた凄い。
「戦慄」っていうフレーズは中々出てくるものではないし、内容はどうあれ、好きな邦題のひとつである。


メンバーが一新され、Robert Fripp以外は全くの新規参加となっている。特に、元YESのドラマー、Bill Brufordの加入は衝撃的であった。
だが、このアルバムを完成度の高いものにした最大の功績者は、何と言ってもパーカッションのJamie Muirであろう。
その鬼気迫るパフォーマンスは伝説的に素晴らしかったらしい。
私も実際、映像でその勇姿を見る機会を得たが、実にトンでもない演奏だった。
残念ながらレコーディング期間中に行われたギグで負傷し、そのまま脱退という形になっている。
その後、仏門に入ったと言われチベット仏教の修行僧になったらしい。80年代になって、再度音楽界に復帰したようだが、現在では画家になっているようだ。
その、Jamie Muirのパーカッション無くして、本作は仕上がらなかったであろうと思われる。その位、アルバムで聴いても効果的なパーカッションの音作りが随所で堪能できる。

曲の構成も、今までのKing Crimsonの曲構成に囚われていない。
非常に練られた曲構成であり、仮にCDプレーヤーなどでランダム再生してみると良く分かるのだが、順番が入れ替わってしまうと凄みが半減してしまう。
あまり言及されていないが、ボーカル曲3曲の並びも、これ以外考えられない。
体内のバイオリズムと連動するかのような曲構成だ。
「宮殿」と聞き比べてみると、とても同じバンドの演奏とは思えない。
特に、今まで参加していた管楽器系を廃し、新たにバイオリンを加えているのも、音のイメージを大きく変えている要素だと思う。

  1. Larks' Tongues In Aspic, Part One / 太陽と戦慄パートI

    Jamie Muirの微妙にガムラン風に聴こえるパーカッション(カリンバ)による演奏が延々と続き、その、音のコラージュに乗って、David Crossの抑え気味のバイオリンと、Robert Frippの重厚なギターが被さってくる。このイントロは今聴いても背筋がゾクゾクしてくる。

    ヘビーなメインテーマとパーカッシブなサウンドのコラボレーションが続き、目まぐるしく音が変化していく。
    各メンバーがそれぞれ自己主張を繰り返し激突していく演奏スタイルが素晴らしい。
    これはロック史上稀に見る傑作のひとつである。

  2. Book Of Saturday / 土曜日の本

    逆回転ギターなどの小技を聞かせつつ、John Wettonが粛々と歌いこむ佳曲。
    Wettonのボーカルと逆回転ギターの音が非常に良くマッチングしている。

    こういう曲にはDavid Crossのはかなげなバイオリンの音がよく似合う。
    David Crossのバイオリンは音が弱く、他の楽器に埋もれてしまう事が多い。そのあたりの不満はRobert Frippも感じていたようで、最終的には脱退してしまうのであるが、この曲にはとても良く合っている。

  3. Exiles / 放浪者

    不気味なサウンドエフェクトによるイントロ。メロトロンの重厚な音に続いて、Robert FrippのアコースティックギターとDavid Crossのバイオリンが重なる。
    フルート(David Crossか?)やピアノの音なども効果的に挿入されていて、第1期クリムゾンに近い音。ああ、やっぱり同じバンドなんだなあという妙な感心の仕方をしてしまった。
    Robert Frippのアルペジオ主体で抑えた演奏が素晴らしく良い。

    抑えたメロトロンの使い方も良い。メロトロン食傷気味の私としては、これくらいの使い方のほうがしっくり来る。

  4. Easy Money / イージー・マネー

    どんどんちゃっ、という水気たっぷりの拍手のようなイントロは、水を付けたモップの音だそうである。曲全体にJamie Muir"Allsorts"が炸裂しまくっている。パーカッションというよりも、まさにこれは"Allsorts"(全てのもの)である。
    John Wettonのボーカルが素晴らしく良い。それと、各メンバーの間の取り方が絶妙だ。
    この曲に限ったことではないが、ライブ音源などでは、この「間」がずれてしまっていたりするのが残念。やはりスタジオ録音盤は一味違うのだ。
    Robert Frippのギターはいまひとつ。

  5. The Talking Drum / トーキング・ドラム

    ラストの「太陽と戦慄パートII」の前奏曲とも言える曲。ライブなどでもこの二曲は続けて演奏されたようである。
    ベースとドラムの織り成す疾走間のあるリズムに乗って段々とボリュームが上がってくるバイオリンとギターの絡み合いが素晴らしい。
    この高揚するスイング感は、数あるロックのアルバムの中でも最上に値する出来である。ここだけでも聴く価値があるというものだ。
    最後に悲鳴のような音(バイオリン?)が鳴り響き、最後の曲に繋がっていく。
    この流れは本作の中の白眉と言って良い。私が一番好きな部分でもある。

  6. Larks' Tongues In Aspic, Part Two / 太陽と戦慄パートII

    現在でも傑作と謳うに恥じない、クリムゾン史上最高の作品であろう。
    単純なリフの繰り返しを基調に絡み合うベースとドラム。イキっぱなしのパーカッション。そして、バイオリン、ギターの織り成す主旋律。どれを取っても素晴らしい出来に仕上がっている。

    一見、単調に聴こえながら、その実非常に計算された緻密な音作りになっているというのがこの時期のKing Crimsonサウンドの特徴であるが、それが一番如実に現れている曲だと思う。

    80年代になり再結成された「ニューキングクリムゾン」に於いて、パート3が発表され、その後もパート4などが出てきているが、パート1、2のようなインパクトは微塵にも感じられない。過去の名作の使いまわしは辞めて欲しいものだ。

後に、King Crimson Collectors' Clubから発売になるCDやビデオ映像で明らかになるのだが、これらの楽曲はツアーでのインプロビゼーションの中から試行錯誤して生まれ出てきているもののようだ。
スタジオに篭って作りこんだのではなく、ライブ演奏を行いながら楽曲の完成度を高めて行ったらしいというのが、このバンドらしい感じがする。
King Crimson Collectors' ClubのCDは、日本ではThe Collectors' King Crimsonというタイトルで3枚ひと組になって発売されている。
時代の流れどおりに順番にリリースされているわけではないのだが、機会があればこれらのライブ音源にも接して欲しいものである。