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●レッド / キング・クリムゾン

Red / King Crimson




  1. Red / レッド
  2. Fallen Angel / 堕落天使
  3. One More Red Nightmare / 再び赤い悪夢
  4. Providence / 神の導き
  5. Starless / スターレス


    • Robert Fripp / Guitar, Mellotron
    • John Wetton / Bass,Voice
    • William Bruford / Percussives
      With thanks to:
    • David Cross / Violin
    • Mel Collins / Soprano Saxphone
    • Ian McDonald / Alto Saxphone
    • Robin Miller / Oboe
    • Marc Charig / Cornet
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第3期クリムゾンの終焉

キングクリムゾンの分類は非常に難しい。
メンバーチェンジ毎で言うなら、スタジオアルバムに関して言えば、全アルバムで参加メンバーが異なるために、「宮殿クリムゾン」とか「太陽と戦慄クリムゾン」などと言うように言わねばならない。
もうちょっと大雑把なくくりで分類したければ、作詞家による分け方というのが出来る。
つまり、Peter Sinfieldが作詞していた「宮殿」から「アイランド」までを第一次クリムゾンとし、Richard Palmer-Jamesが作詞を担当した「太陽と戦慄」から本作「レッド」までを第二次クリムゾンとする考え方である。
これも、ある意味では正しい分類方法だと思うが、「リザード」までを第1期とし、「アイランド」のメンバーを第2期、「太陽」以降を第3期とする考え方がある。
Ian McDonaldMichael Gilesを主体とした「宮殿」、その流れの中で混沌とした音作りになっている「ポセイドン」、「リザード」までを第1期とし、クラシカルな曲調を廃し、ジャジーな演奏を主体としたライブ演奏でRobert Frippと他のメンバーが決裂していく「アイランド」時代を第2期とする考え方だ。
音楽的な意味での分類で言えば、この分け方が一番的を射ていると思われる。
厳密に言えば、アルバム「アイランド」製作までが第1期、Peter Sinfield脱退後、アメリカツアーを行っている間が第2期と言えるかもしれない。
ジャジーなサウンドを好むメンバーと決裂したRobert Frippは新たにメンバーを探すが、これが非常に短期間に行われている事から、第3期の流れの発想はかなり前から計画されていたのではないかと思われる。
第3期クリムゾンの誕生は、衝撃的なアルバム「太陽と戦慄」からと考えて良いが、その流れの終局とも言えるアルバムが本作品となっている。
前作「暗黒の世界」が、1973年後半に行われたコンサートのライブ演奏を主体としたアルバムだった(曲は全て新曲で、ライブ演奏を収録したものは、観客の拍手などの音が入っていないため、つい最近までライブ盤とは知らなかった)のに対し、本作品は1曲を除いてスタジオで製作したアルバムである。
その意味でいえば、第3期クリムゾンには正規盤としては2枚のスタジオ録音盤(太陽と戦慄、レッド)と2枚のライブ盤(暗黒の世界、USA)で構成されていると言えるかもしれない。


「太陽と戦慄」発表後、何回か間を開けて1年以上に渡る長いコンサートツアーを行った後、このアルバムが製作されているが、ツアー終了直後にバイオリンのDavid Crossが脱退。本作発表と同時に解散宣言が出され、第3期クリムゾンはわずか2年弱の活動期間で終焉を迎える事となった。

当時のRobert Frippのコメントによれば、「やるべき事はやり尽くした」と言っており、以後80年代に入り「ニューキングクリムゾン」を結成するまでのRobert Frippの音楽は、Brian Enoとのジョイントなども含め、気の抜けたビールを温めたような音作りしか出来ていない。
まさにこのアルバムで極限に達し、以後数年間放心状態に陥ったかのような印象を強く受けたものであった。
従って、ごく最近のコメントで、このアルバムが「メタルクリムゾンの始まり」などと言っているのは、むしろ後から付けた言い訳ではないかと思われる。

アルバムの聴き所は、前作以上にヘビーなサウンドになった緊張感のある音作りと、Ian McDonaldら、かつてのメンバーの客演である。
アルバムの構成は、1曲目がヘビーでキャッチーなメインタイトル。
2曲目3曲目と、幾らか叙情的な音が続いて4曲目にインプロヴィゼーションが入り、5曲目を壮大なスケールのナンバーで締めている、と書いてしまうと何だか「宮殿」の曲編成のイメージのようだ。
恐らく、充分に意識しての曲構成と思って良いだろう。

「宮殿」がロックンロールの既成概念を破壊したアルバムだとするなら、「レッド」は、破壊し続けたKing Crimsonそのものの飽和点=レッドゾーンへの突入だったのだろうか。
裏ジャケットに描かれている「レッドゾーンを指すメーター」には、解散示唆説やグループ内の不和説、錬金術説など様々な憶測を呼んだが、私は単純に、King Crimsonプロジェクトそのものの飽和点であり、この頂点をもって解散したと考える事が一番自然だという気がする。


  1. Red / レッド
    テーマ曲は、最後に残った3人による演奏(実際には間奏部分にコントラバスが入っているのだが、用意された演奏者が名乗らなかった?ためにノンクレジットという都市伝説ような噂あり。コントラバスの音はメロトロンじゃないかと思うのだが・・・)で、非常にヘビーなナンバーに仕上がっている。
    だが楽曲自体は「ヘビーメタル」の単調さとは正反対をなしており、冒頭のサビの部分から複雑な変拍子構成になっていて手拍子や縦ノリの追随を許さない。
    いわゆる同一リフの繰り返しという、Robert Fripp独特の曲構成なのであるが、ヘビーな分だけ一見シンプルに聞こえる。だが、ギターとベースのリフは、リディアンスケールというジャズギターの奏法を使っており、その緻密に計算されたコード進行とともに、厚みのある音作りとなっている。
    3人編成という最小構成で、最大限のパワーを持つ音を生み出した以上、やるべき事はこれで終わったという結論に達しても仕方ないであろう。

  2. Fallen Angel / 堕落天使
    叙情的なオーボエとコルネットのサウンドが印象深い。Robin MillerMarc Charigも、Keith Tippett Groupのメンバーで、「リザード」「アイランド」の2枚のアルバムに客演している馴染み深いメンバーである。
    Robert Frippのギターはハーモニクス奏法主体で、初期クリムゾンの代表作「エピタフ」のサウンドに近い音作りになっている。
    3人の織り成すハードな音と、叙情的な管楽器の音の乖離が面白い。

  3. One More Red Nightmare / 再び赤い悪夢
    Richard Palmer-Jamesの作詞ではなく、John Wettonが作詞しているものと思われる。
    音は重たいが曲自体は軽く、後のUKASIAに繋がるJohn Wetton節が堪能出来る。
    それは悪く言えば演歌調のノリであり、純粋なKing Crimsonファンとしては今ひとつ物足りないだろうか。

  4. Providence / 神の導き
    ライブ音源の収録だそうである。脱退前のDavid Crossのバイオリンで静かに始まりつつ、延々と即興的な演奏が続く。
    しかしながら、このようなインプロビゼーションの応酬をアルバムに納めるのは、個人的に時間の無駄としか思えない。
    インプロビゼーションは、生演奏に限る。一期一会の演奏であり、必ずしも音楽的に完成度が高いものにはなっていない。
    即興による、お互いの攻め合い、引っ張り合いを楽しむのがインプロビゼーションの醍醐味であり、それには生演奏でなければならないし、最低でも映像が付帯していなければ意味が無い。
    このようなものは繰り返し聴くようなものではないと、私は思う。
    恐らく「宮殿」との対比という意味も含めて、この曲を入れたのだと思うが、「宮殿」のインプロビゼーションにしても、この曲にしても、それほど良い演奏とは思えないのだが如何であろうか。

  5. Starless / スターレス
    第3期クリムゾンのラストを飾る大曲。非常に複雑ながら上手く構成されていて、完成度が高い。
    クレジットには無いが、おそらくIan McDonaldが曲づくりに参加しているものと思われる。
    前半のIan McDonaldによるアルトサックスと後半のMel Collinsのソプラノサックスの対比が面白い。
    あまり歌詞には関心がない雀坊堂であるが、この歌詞は暗く重たい。
    前作、「Starless And Bible Black / 暗黒の世界」のアルバムタイトルそのままが最後の歌詞となっている。
    クリムゾンのラストを飾るにしては、余りにも暗く重たい内容の歌詞と音である。

ジャケットにも言及しておこう。
先ほども少し述べたが、裏ジャケットはレッドゾーンに突っ込んだタコメーターの写真になっている。
アルバムタイトル「レッド」=レッドゾーンという事なのだろうが、そのレッドゾーンが何に対してなのかは、聴いた者が色々と推理していくしかない。
解釈というものは個人個人によって差があって良いと思うので、各自、その意味を考えながら聴くのも一興であろう。
表ジャケットは、歴代クリムゾンのアルバムで唯一、メンバーのポートレイトとなっている。
微笑むJohn Wettonと、無表情な残る二人の対比も面白い。
この写真は、それぞれのメンバーを別々に写して合成していると言われている。
メンバー間に緊張感があり、一緒に撮影できなかったという噂もあったりするのだが、これもまた伝説の一部であろうか。