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●サンダーバード(2004)

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2004年:ユニバーサル映画
監督:ジョナサン・フレイクス
出演:ビル・パクストン、フィリップ・ウィンチェスター他

【これはサンダーバードではない】

どんなに酷い映画でも、最低ランクを付ける事は無いのだが、こいつは酷かった。

新スタートレックでライカー副長を演じたジョナサン・フレイクス監督作品という触れ込みで見たのであるが、久々に見て損したと思ってしまった映画である。
この映画の何がサンダーバードなのか。単なる子供向け映画でしかない。
末っ子のアランはサンダーバードの隊員になっておらず、彼とティンティン(日本語名ミンミン)、それと、オリジナルには出てこないブレインズの息子(!)が大活躍。当のサンダーバードのクルー達は全く活躍しないというトンでもない作品になっちゃっているのである。

妻いわく、「サンダーバードのヒナの物語」という事なのである。サンダーバード版「ホームアローン」とでも言うべきか。いっそのこと「サンダーバードジュニア」とでもしたほうがまだ良かったかもしれない。

期待はタイトルロールでまず裏切られる。
重厚さのスポイルされた軽いテーマソングがダメ。サンダーバードのテーマはフルオーケストラで演奏しなくちゃダメなんだよぉ!!
さらに輪をかけて酷いアニメのタイトルロール。冗長的すぎだ。早く本編始まらないかなと思ってしまう映画は、それだけでダメである。

嫌な予感は的中してしまった。本編に入っても全然面白くないのだ。
まず、出演者に真面目さが無いのが全然ダメ。サンダーバードは糞真面目でストイックに救助活動をしなければならない。活動中にジョークを飛ばすなんぞ、もってのほか。
どうしようもなくヤンキーなんだよなあ、隊員たちが。まあ、ヤンキーなんだけどさ。
こういうのは糞真面目なイギリス人に作らせないとダメなのだ。

あと、基本設定を無視しまくる部分も頂けない。
「サンダーバードをテレビに映しちゃダメ!」
サンダーバードのメカを写真に撮ってはいけないのだ。これは重要な要素である。それだけのためにエピソードが作成されたくらい重要な事である。そういうプロットを簡単にスポイルしてはいけないのだ。

「パパも一緒に救助活動しちゃイカン!!」
サンダーバードは、宇宙ステーション5号で救助信号を受信し、1号が超高速で現地に到着して移動ステーションを設置し、状況報告する。そのスコットからの報告で本部にいるパパが状況判断しながら2号の出動態勢を固める、という基本プロットで構成されている。
だからパパが能天気に救助活動に出ちゃイカンのだよ。そんな事をするから本部が乗っ取られるんじゃないか。

「アランがみそっかすで隊員になれないのなら、ジョンの交代要員は誰なのさ!!」
この映画ではアランが隊員として認められていないという設定になっている。
だとすると、一ヶ月毎に5号に滞在して情報収集する役目は、ジョンの他には誰がやるのだろうか?
見た感じ、どの機体が誰の操縦になるかは決まっていないような印象を受けた。それではサンダーバードの意味が無い。
1号はスコット、2号はバージル、3号はアラン、4号はゴードン、5号はジョンという役どころが作られており、それが人物の性格決定の要素にも繋がっているのである。それを無視するような設定ではいけない。

「大統領からパパの携帯電話にホットラインで救助要請入っちゃダメでしょうに!!」
確かに5号が壊れちゃったから通信手段が無いのは分かる。でも、サンダーバードはどこの国にも加担しない中立団体だ。サンダーバードの技術を悪の手に渡してはならないのだ。だからこそ、写真撮影も禁止なのだ。それはその国がアメリカであっても同じことである。
大統領がパパの携帯の電話番号を知っていてはいけないのである。

そういった基本プロットが無視されているのが頂けない。そのあたりを確り作っていれば、ここまで非難される映画にはならなかったように思われる。

我々がサンダーバードに期待するのは、事件が起こって、救助隊が出動して、一回失敗して、再度チャレンジして成功する、そのハラハラドキドキにあるのだ。
一回失敗するところがキモなのである。ああっ、失敗しちゃった!どうしよう!!そうやって、テレビの中の隊員たちも、テレビの前の子供たちも手に汗握るのである。その一体感無くして何がサンダーバードだ。
玉の汗をかきながらバージルが叫ぶ。「ワイヤーが切れそうだよ!スコット!」「よーしわかった、1号で下から持ち上げてみる!」ええっ!1号で下から持ち上げるのかああ!!!
そういうドキドキとアイデアの共感。どんな危機でも新しいアイデアを忘れない精神。(ま、その片鱗は映画にも出ていたけどね)それこそがサンダーバードの真髄である。
汗かきまくって、長時間の救助活動で真っ黒になり、そのうちヒゲまで青黒くなって来ちゃったりするリアリズムが必要なのだ。

事件が起こるまでの経緯というものも、細かく描写しなければいけない。
ちょっとした事故が大事件に繋がる。その経緯をしつこいくらい前段から説明していかねばならないのだ。
それは悪役フッドが出てきても一緒。
あと、フッドは妙に間抜けなので、最後は地団駄踏ませて悔しがらせるような演出で無ければダメ。
失敗したあとの「ほわんほわんほわ~ん」という間抜けなBGMと、「ちくしょう!サンダーバードめ!今に見ていろ!」っていう台詞はお約束だぞ。

フッドが悪役として中途半端なのは、その取り巻きがダメという点にもある。手下の女科学者がダメだ。不美人という事ではなく、キャラクターがおちゃらけ過ぎている。
おちゃらけは、失敗して最後に地団駄踏むフッドだけで良いのだ。そこまで悪の化身に徹して悪さをするから、余計にフッドの間抜けぶりが面白さを引き立てるのである。

ペネロープが中国拳法の達人ってのも頂けなかったなあ。まるで迫力なし。演じている女性も、まるで気品が感じられない。
英国一の大金持ちだぞ。グレース・ケリー級の美女を持ってこないと話にならん!
配役で、まあまあ納得できたのはパーカーだけ。

メカがことごとくCGなので、重さが無い。重さを表現出来ないサンダーバードはダメ。
それとメカデザインがもうひとつであった。
豚みたいな2号は言うに及ばず、妙に小型なジェットモグラも今ひとつの出来だった。
一番肝心なことがあった・・・
メカにウェザリング出来てないじゃん!!!サンダーバードの真髄は汚し塗装だぞっ!!!!

日本人がサンダーバードを見て喜ぶ視点と、アメリカ人がサンダーバードを見て喜ぶ視点は、こうも違うのだろうか。
そんなことはあるまい。人種、民族の違いなく熱狂したはずなのに、何か間違ってないだろうか。
結局のところ、子供心を失った大人が商業主義的に作ってしまった映画の悪い見本にしかならなかった、という事なのだろうか。それが物凄く残念でならない。

これを見て、子供は面白がるだろうけど、すぐに忘れるね。憧れなんか持たない。それならば、オリジナルを見せたほうが絶対に良い。
続編が出来ても、絶対見ないぞ。