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●宇宙戦争(2005)

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2005年:パラマウント映画
監督:スティーブン・スピルバーグ
原作:H.G.ウェルズ
出演:トム・クルーズ、ダコタ・ファニング、ジャスティン・チャットウィン他

【トムと一緒に宇宙戦争を体験しよう!】

面白かった。
まず、CGと実写の区別が全然つかないのが素晴らしい。

私がスターウォーズの新3部作に馴染めない大きな理由の一つが、アニメっぽい動きのCGなんだけれども、そういうわざとらしさが全然ない。
CGの欠点である質量感の無さをかなりぬぐえている。
はっきりとした画像じゃなくて、空気感があるんだよねえ。トライポッド(宇宙人の乗っている巨大ロボットのようなもの)に当たる光が乱反射していてぼーっとした感じが実に現実的で良い。
破壊される建物はミニチュアなのかCGなのか、はたまた実物大のセットなのか、それすら分からない。
凄いなあ。

怪光線を危機一髪でかいくぐって逃げるトム・クルーズの姿はまるでインディ・ジョーンズであった。
光線が当たると人間は瞬時にして粉々になるのであるが、その粉々さが半端ではない。単なる小麦粉状態になっちゃうんだね、しかも洋服だけは残っちゃって、ひらひらと宙を舞っていたりする。このあたりのセンスの凄さは流石スピルバーグって感じでもう脱帽するしかなかった。
用を足そうと川辺に出る少女が見たものは上流から流れてくる死体。最初1体だけなのに、その後うようよ川面を覆い尽くすほどの死体が流れて来る。この感じも蛇ドバドバ虫ガバガバのインディ・ジョーンズを彷彿とさせる徹底ぶりだ。しかし、死体ドカドカとはまさに最終兵器だな。
叫ぶ少女の目を覆って見せないようにする父ちゃん(トム)。小便はどうしたんだ!

リアルな怖さを呼び起こしていくのは、これが全てトム一家の視点でしか描かれていないという事だ。
大統領も、軍隊の指導者も出てこない。放送もまともに映らないから、今世界がどのようになっているかが全然分からない。客観性を排除し、主観のみで映画を進行させているのだ。だから、我々はトムと一緒に全く情報が無い中で不気味な宇宙人の侵略を疑似体験することになる。
これは怖い。

宇宙人が何をやりたいのかが明確に分からないのが非常に怖い。
人類皆殺しなのか。
生け捕りにして血を吸うのか。
何が何だか全然分からない。
「地球人に告ぐ!」なんて、テレビ越しにサングラスかけたトッポい宇宙人が侵略の理由を語ったりしないから、本当に怖い。
この恐怖感は下から見上げるように撮影しているトライポッドの映像も含めて、等身大の怖さである。

何のメッセージも無い、ひたすら殺戮を繰り返す宇宙人の姿はスピルバーグのデビュー作である「激突!!」のモンスタートラックを彷彿とさせる。
こういう怖さを演出させたら右に出る監督はおらんね。
この映画はスピルバーグの原点回帰なのか、などと言っては思い込み過ぎか。

誉めてばかりもいられないので、幾つか気になったポイントを。

映画の序盤はダメ親父トムのダメっぷりを描写しているのであるが、甘いというか、中途半端である。人間ドラマじゃないので仕方ないけど、もうちょっと徹底的にダメ親父に描くべきではなかったか。
冒頭でコンテナを重機で積んでいく仕事をしているシーンがあるんだけど、これがどうしようもない位下手でカントクから罵声を浴びせられていたり、乗ってる車はムスタングなんかじゃなくて安物の型式も分からない古いキャデラックか何かの方がダメオヤジを一層引き垂たてる事になって、良かったんじゃないだろうか。
この父ちゃん役が、トム・クルーズじゃなくて、例えばブルース・ウィリスとかトム・ハンクスでも体制に影響ないかなーという感じで、それがまたトム・クルーズの薄いところなんだけど、一方で妙に存在感のある娘役の子は凄かった。
個人的には何故か安達裕美を連想してしまって(安達裕美が嫌いというわけでも無いんだが)興ざめであったが、この子は将来が楽しみかもしれないなあ。
息子はもうちょっとオタクっぽい子を使った方が面白かったような気がする。

地下室に隠れている所で、胃カメラのお化けのようなモノが地下室に入って来て、トム親子とかくれんぼをするのであるが、この胃カメラはちょっとアニメっぽくて嫌だった。
センサーじゃなくて胃カメラで探しているっていうのも何だか間抜けである。
さらに言えば、トライポッドが遥か昔に地球に来ていて、長い間地中に眠っていたという設定も戴けない。
1950年代ならまだしも、これだけ地下開発の進んだ現代を舞台にして、それは無いだろうというシチュエーションであった。

粗を探せばきりが無いが、最も惜しかったのは宇宙人の造形であろう。
スピルバーグらしいといえばらしいのだが、猿っぽい顔立ちで意外と可愛いのだ。
これではいかん。
やはり宇宙人は一つ目のモンスターでなければイカン。地上の生物を彷彿とさせるようなデザインではイカン。
顔は猿だが足は3本で、この造型はトライポッドに共通するものがあるのだな。
このトライポッドに関しては、原作の小説の挿絵に登場するロボット宇宙船に良く似ているのだが、宇宙戦争というと私のようなオールドSF映画ファンには、前作のヘンテコな宇宙船と一つ目宇宙人のイメージが捨てきれない。
今回のものは、それはそれで面白い造形であったが、やはり前作の宇宙人と変なデザインの円盤を凌ぐ事はできなかった。無念である。