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●スノウブラインド / すぎむらしんいち

すぎむらしんいち 著
講談社発行(2006.9)
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【妙にリアルなハダカが良いんだよ】

すぎむらしんいちと言えば、サムライダーとか右向け左なんかが有名だと思うが、まあ、マイナーな部類に入るマンガ家である。
本作は、1999年に発表された短編集ALL NUDEに新作を追加したものである。

すぎむらしんいちの描く世界は真面目と狂気の境目を常に行く。
気が狂ってるとしか思えないんだけど、その狂い方が半端じゃなかったりして、描き方によっては途轍もない作品に仕上がる危険性を孕んでいる。
だが、その狂気の度合いに妙な間があるために、発禁すれすれの危うさが妙なバランス感覚を伴っていて、読んでいて笑いさえ引き出されてしまうのだ。
どれも危険な作品ばかりなのだが、唯一異なる印象を与えるのが、最後に収録されている「カメラ少女」である。

無口で親にさえ写真を撮って貰えない愛想の無い少女が父親のカメラ(コンタックスG2!)を持ち出し、様々な写真を撮る。そしてラスト2ページ見開きで、彼女の撮影したコマが16枚描かれるのであるが、これが凄くいい。
ストーリーの中で彼女がシャッターを切っている場面が、そのまま描かれているのだが、その構図が抜群なのだ。
読み返しながらおおっ!と唸ってしまうコマ。特に飛行船のコマが秀逸である。
この作品は、全体の中では異質であるが、最後に持ってくるだけあって非常に印象的である。

すぎむらしんいちの作品には裸の女性が良く出てくるのであるが、妙にリアリズムのある裸なのである。決して巨乳なわけではない。むしろスレンダー系である事が多いのだが、この裸のリアルさが素晴らしく良い。
エロティックな裸ではない、やはり狂気の似合う裸である。
この作者の作品はヤングマガジンで読んだのがはじめだと思ったが、妙に裸の女が出てきて駆けずり回る作品だなあと思っていた。
本作でも、裸の女が沢山出てくる。
中でも一番なのは「ALL NUDE」。高校時代の卒業アルバムで、何故か全裸で写真に写っている女子の話。そのアルバムを懐かしがってみる夫に、妻がツッコミを入れるのだが、彼女がハダカであることに何の抵抗も反応も示さない夫の姿が笑えてしまう。
オチも良いのだが、この作品に見られるハダカの女が、すぎむらしんいちのハダカを象徴しているように思えてならない。

新作は、「パパが地球人を辞めた日」と「でぶでば」の2本。
「でぶでば」のほうは、ヤケクソになった三流の女性お笑いコンビの物語であるが、「でば」の方がモロに久本雅美なので、何だか妙にリアルな話に思えてしまい、笑うに笑えなかった。