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●ケンタッキー・フライド・ムービー

cover アルバトロス

監督:ジョン・ランディス
出演:ドナルド・サザーランド、ジョージ・レーゼンビー他

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【最低は最高】

よりによって2007年に一番最初に見た映画がこんなのであった。いやー。
ブルースブラザース等でお馴染みジョン・ランディス監督のナンセンス・ギャグ映画である。
22の小エピソードから成り立っており、アメリカのテレビ番組をザッピングしながら見ているような面白さが特徴だ。

ところで、この手のギャグというものは、ハマる人はハマるが受けない人には全然受けない。
丁度2006年暮れの紅白歌合戦で、DJ-OZMAがハダカのような衣装のパフォーマンスを見せて大顰蹙を受けたが、アレを面白いと思うか、相応しくないと眉をしかめるかの違いにもちょっと似ている。

余談にはなるが、実は、私はDJ-OZMAのパフォーマンスはイマイチだと思った。
最初は本当に脱いだのかと思ってビックリしたのだが、すぐに衣装だと気が付いた。どうせなら本当に素っ裸でやったほうが良かったのになあ、などと無責任な事を思ったものである。
あのパフォーマンスがもうひとつだったのは、「NHK的やらせ」ではないかと勘ぐってしまったことにもある。
ディレクターは知らなかったなどと言っているようだが、そんな事はありえない。
あれを出来レースと言わないなら、何が出来レースだ。
視聴率を取りたいがための話題づくりなのだ。それが見えてしまったから全然詰まらなかった。
もしもDJ-OZMAが本気だったならば、NHKとの裏打ち合わせで、ヌードまがいの衣装を着てサプライズを演ずるという打ち合わせにしておいて、本番では本当のヌードを出してしまった方が余程面白かっただろう。
DJ-OZMA=綾小路翔が二度とNHKに出ないと腹をくくる覚悟があれば、それも一興であったと思う。

そんな事はどうでも良いのであった。
で、この映画である。
DJ-OZMAはニセモノだったが、この映画にはハダカのネーちゃんが結構出てくる。
しかも「カトリック女子高校生の災難」だ。金髪ネーちゃんがバッコンバッコンやってる下品極まりない映画なのだ。
1970年代の米国の世相をパロディにしているので、現代の日本人の感覚では充分に笑えない所もあったりする。しかし、これはツボに嵌ればムチャクチャ笑える映画である。

現代の日本のテレビに氾濫している「お笑い」は、ターゲットが限りなく「おこさま向け」である。ここでいう「おこさま」とは、文字通り年齢の低い「お子様」と、精神年齢の低い「低能大人」のダブルミーニングである。
脊髄反射のような笑いでは、瞬時の笑いは掴めるが、笑いの波に乗り切れないと全然面白くない。
アタマを使っていないから、ネタもそれなりだ。
ところが、対象が低いからツボに嵌ればそれなりに笑える。隣の人が笑ってるから自分も可笑しく感じてきて、笑ってしまう。何言ってるか全然分からなくても、身振りが滑稽なので笑ってしまう。それが今の日本のお笑いである。
これではお笑いのスキルはどんどん低下していくばかりである。

そこでこの映画だ。
多分今の若い人の中には全然笑えない人が多いと思う。
たとえば前述の「カトリック女子高生の災難」なのであるが、女優たちのリアクションが、ちゃんとカトリックの流儀をわきまえているところが素晴らしい。だが、カトリックの素養が無い人にはただの外人のねーちゃんがセックスしてる下品な画像にしか見えないから、笑いも中途半端になろうというものだ。
細かいところに必要以上に拘るのがジョン・ランディスの良くも悪いところであって、ブルース・ブラザースにしてもそうなのだが、本当にワンシーンごとにとてつもない情報量でネタが仕込んであるから気が抜けない。
この手のパロディ映画は「つかみが肝心」である。
冒頭のエピソード「アルゴン石油会社のCM」で、石油はケンタッキーフライドチキンのギトギト油や若者のニキビから搾取しているという話はビジュアル的にも面白く、つかみは完璧である。
ブルース・リーと007好きには、「ドラゴン イカレの鉄拳」は大爆笑の連続になるに違いない。細かいところまで凝っているのだ。
だが、延々と続く「燃えよドラゴン」のパロディ程度にしか思えないと、殆んど笑えないのではないか。
また、「危険を買う男」は、ヘルメットを被ってスラム街にたむろする黒人の前に立ち、大声で「ニガー!」と叫んで逃走する。ここでアメリカ人大爆笑。日本人にはこのブラックジョークは分からんだろうな。私とて、感覚的には理解できるが、本当に理解出来ているかどうか自信は無い。
個人的に大好きなのは、「セックス・レコード」というエピソードで出てくる「ビッグ・ジム・スレイド」というキャラクター。このエピソードは予備知識が無くても笑える。

実際問題、若い人(30代以下)にはハダカの出てくる話以外はつまらなく感じてしまうに違いない。だが、それでいい。
無理して当時のアメリカの世相を勉強して、「やはりこの映画は的を射たパロディになっていますな」などと訳知り顔で語る必要はない。むしろ、ビッグ・ジム・スレイドを見てゲラゲラ笑っているほうが余程健康的というものである。
「イカレの鉄拳」で、拷問される代わりにデトロイト送りになるスパイが居て、「デトロイト送りだけは勘弁してくれ!」と泣き叫ぶシーンも、何故デトロイトなんだろうと思う必要はない。そういうのが分かっている人にはそれなりに楽しめるが、分からなくても面白ければそれでいいだろう。
みうらじゅんの監修による字幕は比較的親切で分かりやすいが、以前のビデオ版のダサい訳のほうがオリジナルのイメージを髣髴とさせるような気がした。なお、DVDにはみうらじゅんの解説も入っているので、分からなかったら参考にすると良い。先ほどのデトロイトの謎の答えも解説しているが、謎は解かないままのほうが面白いこともあったりする。

アメリカ人のバカ度は徹底していて、ここまでバカで下品だと、本当に低俗な映画にしかならない。このあたりの徹底さ加減は、さすがアメリカと脱帽せざるを得ない。
日本だと、やれ映倫だの放送禁止用語だの、ウルサイ団体が多いので徹底的にハメを外せないのが残念である。
ところが、このバカ映画には有名な映画のパロディというちょっと高尚な仕掛けがちりばめられているので、低俗な人が見れば低俗にしか見えないが、映画好きやアメリカのテレビ好きにはたまらないパロディとして見ることが出来るようになっている。
このあたりの差別的感覚というのもパロディ映画の醍醐味と言えるだろう。
下らないと切って捨てるか、下品さだけで笑うか、パロディを熟知した上でほくそ笑むか。この映画は見る側のスキルによって、如何様にでも変化する映画だといえる。
その見かたのどれが良いとか悪いとかいう事はない。人それぞれの受け取り方でよいのだ。但し、下品さだけで気に入ったのなら、一度解説を見て、もう一度見てみると、また違った面白さが発見できるだろう。
こんなクソ映画、2回も見るのは退屈!と切って捨てるのもまた一興。

くだんのDJ-OZMAにはパロディが無かった。私が面白く無さを感じたのは、もしかするとその一点に尽きたのかもしれない。
もちろん、パロディだけが笑いではないが、ああいうモノを正当化するにはパロディという手法を取り入れたほうが良かったような気がする。ま、余計な話。

ちなみに、この映画が気に入ったら、同様のパロディ映画であるフライング・ハイ、フライング・ハイ2、裸の銃(ガン)を持つ男シリーズも楽しめるだろう。

なお、この映画にインスパイアされて日本でも「下落合焼とりムービー」なるナンセンスギャグ映画が作られた。
スネークマンショー的なものがお好きな人ならば、こちらもオススメできる映画であるが、2007年1月現在DVD化はされていない。中古かレンタル落ちのビデオを探すしか無さそうである。