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●詠時感~時へのロマン / ASIA

  1. ヒート・オブ・ザ・モーメント / Heat Of The Moment
  2. 時へのロマン / Only Time Will Tell
  3. 孤独のサヴァイヴァー / Sole Sourvivor
  4. ワン・ステップ・クローサー / One Step Closer
  5. タイム・アゲイン / Time Again
  6. この夢の果てまで / Wildest Dreams
  7. ウィズアウト・ユー / Without You
  8. 流れのままに / Cutting It Fine
  9. ときめきの面影 / Here Comes The Feeling


    • John Wetton / bass,vocal
    • Steve Howe / guitar
    • Geoffry Downes / keyboard
    • Carl Palmer / drums

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プログレ脇役バンドは凄いか。


そういうわけで、ASIA来日記念レビューである。
ASIAというのは、三大プログレッシブバンドのYESKing CrimsonEL&P出身のメンバーによって構成された、スーパーグループである。とはいうものの、各バンドの構成メンバーの主役が集まったというわけではなく、どちらかといえば脇役と言えるメンバーによるバンド構成だ。

リーダー格のJohn Wettonは、かのKing Crimsonに在籍したベース&ボーカリスト。「太陽と戦慄」「暗黒の世界」「レッド」「USA」の4枚のオリジナルアルバム(うちUSAはライブ盤)に参加しているが、King Crimsonといえば誰が何と言おうとRobert Frippのバンドなわけで、ジョンのボーカルとブリブリとノイジーなベースラインはこの時期のKing Crimsonの特徴のひとつではあったけれど、主役とは言いがたかった。
Steve HoweYESの二代目ギタリスト。彼を脇役と言うと怒られるかもしれないけれど、YESにあっては、やはり主役はJon Andersonなわけだし、もう一方の西の横綱にはRick Wakemanが控えているだけに、ハウは張出横綱っていうか一枚落ちて大関クラスの印象をぬぐえない。
キーボードのGeoffry DownesYESに在籍していた。が、彼はTrevor Horn(現在はプロデューサー業に専念)とセットでYESに加入したBugglesのメンバーである。Bugglesって言えば「ラジオスターの悲劇」がスマッシュヒットした事で有名なのであるが、この人がYESに入るとは思わなかったし、所詮YESの中では格下。幕内っていうより人数合わせの十両っていう感じでしかない。
最後のCarl Palmerに至っては、EL&P(エマーソン・レイク&パーマー)というバンドで、名前までバンド名になっていたのに、脱退後に故Cozy Powellに加入されてそのまんまEL&P(エマーソン・レイク&パウエル)を名乗られるという体たらく。

まあ、そんなメンバーが集まって作っちゃったバンドだから、コテコテのプログレにはならず、耳馴染みの良いポップなロックバンド(当時は産業ロックなどと称された)に仕上がったのは不幸中の幸いと言えるかもしれない。
このバンドを組む前にUKというバンドを演っていたJohn Wettonだったが、ASIAは、そのUKの延長線上にあるバンドである。UK自体、著名なプログレバンドのメンバーが集まった4人組のスーパーバンドだったが、音楽性の違いで2人が脱退し、2枚目のアルバムからメンバーチェンジを行ってポップ路線に移行していく。
時代背景を考えると、この転換は有効であった。事実、UKは日本を中心にスマッシュヒットしたし、ASIAは全世界でヒットした。プログレという範疇で語らないのであれば、ASIAは素晴らしいバンドである。

このアルバムの特徴は、短いポップな曲が多い中で、曲の構成が非常に良く考えられていることだろう。耳馴染みの良いポップなメロディーを中心として、多彩なアレンジを織り込み、しかも個々の楽器の技術力もきちんと際立たせている。この音作りは売れることを前提として考えられているもので、それが一部の評論家からは「産業ロック」などと呼ばれて批判されることになった(この時期、同様な音作りを行っていたバンドには、TOTOJourneyなどがあるが、押しなべて圧倒的な技術力を下地にした耳馴染みの良いポップなロックである)。
だが、聴くほうにとってはこの手の音は聴きやすく覚えやすいので、無闇に批判されるようなモノではないと思う。売れる事=罪悪という一部評論家の考えは肯定できない。難解で意味不明なマスターベーション音楽を持て囃すのは、逆に音楽のクオリティを下げるだけだ。

売れる曲を作る事は、それなりの才能と技術が必要であり、それを具現化したバンドは賞賛されるべきである。もっとも、本人たちが楽しんでやっていないとするならば話は別であるが。
そういう意味では、この手のバンドを聴くとするならば、ファーストアルバムが一番良いという事になるだろう。売れる事を義務付けられていくうちに、曲作りが仕事になっていき、クオリティはどんどん下がってしまうからだ。
メンバーが楽しんでやっているであろう事は、曲を聴けば良く分かる。産業ロックの中に垣間見える「イエス節」「ELP的おかず」がピリリと効いているからだ。2枚目以降、これらのASIA的調味料が全く添加されなくなってしまうのが残念であると同時に、このファーストアルバムの出来を唯一無二のものにしていると言えるかもしれない。

ファーストアルバムで、ここまでのクオリティを出してしまうと2作目以降が辛くなる。
残念ながらASIAも2作目の壁を越えることは出来なかった。そういう意味では、ASIAを聴きたいのならこのアルバム1枚で充分だと言えるだろうか。

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全曲捨て曲がなく、どれも良い出来であるが、強いて押すならば1曲目ヒート・オブ・ザ・モーメント / Heat Of The Moment、3曲目 孤独のサヴァイヴァー / Sole Sourvivorだろうか。あとは好みの問題である。
演奏も皆素晴らしいのだが、唯一惜しいのは、ちゃんと譜面どおり?に弾いているにも関わらず、何となくモタモタと聴こえてしまうSteve Howeのギターソロくらいだろうか。YES好きなら、この「ハウ節」はご愛嬌と言えるのだが、そういう下地の無い人にはヘタに聴こえてしまうかなあ?本当にこの人のリズム感は最低である。

ところで「詠時感」と書いて「えいじあ」と読ませる邦題は最低である。"Lark's Tongues in Aspic" を「太陽と戦慄」と訳し、"The Darkside of The Moon" を「狂気」とした邦題センスには遠く及ばない。
各曲の邦題ももうひとつ。「Sole Sourvivor」は直訳すれば「唯一の生き残り」なわけで、「孤独のサヴァイヴァー」では何が何だか分からんではないか。
実は、このアルバムは来日公演に合わせて最近買いなおしたのであるが、音質の悪さが絶望的。これをデジタル・リマスターしたら凄い音になるのになあ。それが唯一の欠点といえば欠点だ。