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●フランケンシュタインの幽霊(1942)

cover ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
本作品は、「フランケンシュタイン・レガシーBOX」の中に収録されています。

監督:アール・C・ケントン
出演:ベラ・ルゴシ、ロン・チャニィ・ジュニア他

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【オリジナル・フランケンシュタインシリーズ最終作】

ユニバーサルのフランケンシュタインシリーズは続き物になっている。
「前作で死んだはずのモンスターは、実は生きていて・・・」というプロットが繰り返されていくわけだが、この流れは後年、東宝ゴジラシリーズにも引き継がれていて実に興味深い。
さて今回は、前作で死んだはずのモンスターだけでなく、死んだはずのイゴールまで復活してしまう。このようなご都合主義はだんだん顕著になっていくのだが、それは続く予定の無い作品を無理やり続き物にしているための矛盾と言えるだろうか。

今回登場するラドウィグ・フランケンシュタイン博士は前作でモンスターを復活させたヴォルフの弟という設定である。
ヒロインはまたもやエルザという名前だ。オヤジ以下2人の兄弟の嫁がみんな同じ名前ってのはありえないとは思うが、それはそれ。
イゴールは前作に続いてベラ・ルゴシが見事に演じているが、一番の差異は本作よりモンスターがボリス・カーロフではなく、ロン・チャニィ・ジュニアになっている点であろう。

ロン・チャニィ・ジュニアと言えば、狼男役で有名であるが、元々無声映画時代のユニバーサルの怪奇役者の代表的存在であったロン・チャニィの息子でもある。
1931年の初代フランケンシュタインのモンスター役は元々ロン・チャニィが演じる予定であり(癌で死んだため実現しなかった)、その意味では4作目にして漸く本来の役者の息子が演じることになったというわけである。

ロン・チャニィ・ジュニアのモンスターは大きさで言えばカーロフより大きく見栄えがする。
だが、元々の体格が良すぎるので、ちょっと太めのイメージになってしまっていて、そこがモンスターとしての怖さをスポイルしているようだ。第一作のようなモンスターとしての威厳はなく、その木偶人形のような動きはコミカルで、タレ目の瞼も、妙に可愛らしい印象を与えてしまう。これではモンスターとしては台無しである。


***
簡単に入手できる作品ではないので、簡単に粗筋を紹介しておく。ネタバレ、落ちも書いてあるので要注意。

前作「フランケンシュタインの復活」でモンスターは硫黄の沼に落ちて溶けたが、モンスターの呪いを恐れる村人たちはフランケンシュタイン城そのものを爆破しようとする。
何故かヴォルフに殺されたはずのイゴールが生きており(これについては何の説明も無し)、爆破されて壊れた城の地下の硫黄の中からモンスターを発見する。モンスターは硫黄の煮えたぎる穴の中に落ちて溶けたはずだったのだが、「溶けた硫黄が固まってモンスターの体を保護した」っていう言い訳は何なのさ。
後でも出てくるのだが、このような中途半端に科学的な言い訳っていうのは逆にツッコミネタを提供しているかのようで、現代の感覚で捉えるとイマイチである。むしろただ単に不死身の体は灼熱の硫黄にも負けずに生き残っていたというほうが怖いし、説得力があるというものだ。

かろうじて生きていたものの、衰弱しているモンスターに力を与えようとするイゴールは、フランケンシュタイン男爵の次男坊で、脳外科医であるラドウィグに目をつける。前作からどれくらい時間が経っている想定なのか不明なのであるが、ラドウィグ役の俳優はかなりの年配だ。最初は弟と言っても初代博士の弟かと思ってしまったくらいだったが、そうではなく、第3作目で登場したヴォルフの弟という設定のようである。
これまたとんでもないご都合主義である。どうせなら前作のヴォルフのところへ行けば良いのに。しかも、俳優が年寄りでトウが立ちすぎているのが矛盾を感じさせる。ラドウィグを演ずるのはセドリック・ハードウイックという人で当時49歳。英国の舞台俳優で、1939年にはサーの称号を受けている。
どうやらこの人を主人公に据えた怪奇映画を撮りたかったというのが、この映画の真実のようだ。
この映画の作られた1942年という時代背景を考えると、ヨーロッパではナチスドイツの侵攻が進み、この年の暮れには日本軍がパールハーバーを攻撃し太平洋戦争が勃発、第二次世界大戦に突入していく。そんな時代の中では役者を揃えるのも大変だったということなのかもしれない。

話を粗筋に戻そう。
ラドウィグ博士は同僚のボーマー博士と脳外科をやっており、体から切り離した脳を治療して、また元に戻すという治療法をやっている。これが後々の伏線になっていくのだが、本作品はフランケンシュタイン映画の中でも色々な伏線があって、それなりに楽しめる脚本になっている。流石は当時のユニバーサル映画ナンバーワンの人気シリーズだ。

フランケンシュタイン映画のお約束としては、この復活劇のほかに小さな子供との遭遇がある。
今回もまた、いたいけな少女に遭遇し、彼女を気に入ってしまうのだが、この少女もモンスターの事を嫌っていない。少女役の女の子がとても可愛らしく、演技も自然で歴代の子役の中でもトップクラスだと思った。

その女の子に頼まれて風船を取ろうとしたモンスターは、手違いで村民を一人殺してしまう。精神鑑定を依頼されたラドウィグ・フランケンシュタイン博士はモンスターを見て驚愕する。
父と兄の日記を見たラドウィグは、モンスターの問題が狂人の脳を使ってしまったことを突き止める。博士は、警察の追手を逃れたモンスターとイゴールを匿うのだが、不幸な事件によって助手エルンストがモンスターによって殺されてしまう。
ラドウィグ博士は、友人ボーマー博士の協力により、亡くなった助手エルンストの脳をモンスターの脳と交換することを計画する。
その計画を知ったモンスターは、仲の良い少女の脳と自分の脳を交換してもらおうとして少女を連れ去る。
一方のイゴールは、自分の脳をモンスターの体とドッキングさせて貰う事を企み、ボーマー博士に近づき、彼を篭絡してしまう。

連れ去られた少女を取り返すべく、村人たちは総出でフランケンシュタイン博士の屋敷に乱入する。少女奪還には成功するが、そこにはイゴールの脳を持つモンスターが復活していた。
ラドウィグ博士はボーマー博士がエルンストの脳とイゴールの脳を交換してしまったことを知る。不死身の肉体に悪魔の頭脳を宿してしまったのだ!!
勝ち誇るモンスターだったが、意外な結末を迎える事となった。
突然、彼の目が見えなくなってしまったのである。
ラドウィグ博士が叫ぶ!

「イゴールの血液型はモンスターの血液型とは違っていたのだ!だから拒否反応を示して目が見えなくなったのだ!!」

って、おいおい。そんなんでいいのかー!
まるでH.G.ウェルズの宇宙戦争のエンディングみたいなオチだなー。
目の見えなくなったモンスターは、屋敷の梁の下敷きになって屋敷もろとも火に包まれてジ・エンドとなる。


***
フランケンシュタインシリーズは、本作品をもって一応の終止符を打つ。
だが、フランケン人気にあやかろうとしたユニバーサル映画は、以後モンスター対モンスターの対決路線を打ち出す事を決め、「フランケンシュタイン対狼男」、モンスター総登場の「フランケンシュタインの館」「ドラキュラとせむし女」などを作っていく。
別項で解説するが、「フランケンシュタイン対狼男」は、フランケンシュタイン映画の続編というより「狼男」の続編という作りになっており、話の連続性という意味では「フランケンシュタイン」シリーズ最終作は本作品と言って良いだろう。

連続物は、作品を重ねる毎に、そのクォリティを下げてしまう場合が殆んどだ。稀に「フランケンシュタインの花嫁」のように続編も正編に劣らぬ傑作である場合もあるが、それでも3作目、4作目になってくると映画の質は低下してしまう。
しかも、モンスターが多数登場すればするほど恐怖度が激減し、かつてはピンを取ったモンスター達も大部屋俳優並みの扱いとなっていくあたり、「ゴジラ」や「ウルトラマン」、「仮面ライダー」などの特撮映画の怪獣や怪人たちの「スペシャル版怪獣総登場の巻」に通じるものがある。
時代は繰り返すんだなあ。