筆者の購入したDVDや本、鑑賞した映画、テレビ番組、コンサート等のインプレッションを書いています。
Top > 映画/ドラマ > 邦画

●フラガール(2006)

cover ハピネット・ピクチャーズ
監督:李相日
出演:松雪泰子、蒼井優他

画像をクリックすると、amazon.co.jpでDVDを購入する事が出来ます。
どうせ買うならメモリアルBOX


【CGには真似できないホンモノの魅力】

ここのところ、マイフェイバリット女優に成長しつつある蒼井優の出演している映画である。
内容は「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」を彷彿とさせるもので、どちらかといえば成功譚と言えよう。
炭鉱閉山対策の事業として、跡地にハワイアンセンターを建設し、炭鉱労働者を雇用してリゾートタウンを作ろうという目論見の中で、そのハワイアンセンターでフラダンスを踊る踊り子として炭鉱労働者の子女を養成するという物語である。

実話を元にして作成されており、常磐炭鉱に設立された常磐ハワイアンセンター(劇中でもそのままで登場する)と、その設立に関わったプロダンサー(劇中では松雪泰子演じる平山まどか)と、初代のトップダンサー(劇中では蒼井優演じる谷川紀美子)は、いずれも実在の人物をモデルにしているそうである。

無知な話で申し訳ないけれども、常磐ハワイアンセンターは現在スパリゾートハワイアンズという総合リゾート施設に生まれ変わって存続しているのだが、てっきり無くなってしまったものだと思っていた。どうやら船橋ヘルスセンターと勘違いしていたようである。


+++
お恥ずかしい話であるが、この手の映画にはからきし弱いので、後半は泣きっぱなしであった。
紀美子(蒼井)をダンサーに誘った早苗(徳永えり)が、父親(高橋克己)の炭鉱夫解雇の事情で夕張に引っ越さねばならないエピソードあたりから、最後まで泣きっ通し。
小百合(山崎静代:南海キャンディーズ)の父が死ぬエピソードや、まどか(松雪)と紀美子の兄洋二朗(豊川悦司)の絡むエピソードなど、お涙頂戴と言わんばかりの演出なのであるが、こういうのは斜に構えず素直に泣きながら見るのが正しい映画鑑賞法だと思っている。泣くのが恥ずかしいならDVDでも買って家で号泣するのが宜しい。

中でも圧巻なのは、紀美子がダンスの練習をしているところを母(富司純子)が見るシーンだろうか。
紀美子が初めてまどかの練習を見てフラダンサーになるのを決意したシーンとオーバーラップする同じ踊りを、紀美子が見事に踊りこなす。それを見て、今までダンサーになることに反対していた母は、応援するほうに気持ちを改めるのであるが、このシーンを素晴らしいものにすることが出来たのは、一にも二にも、紀美子役の蒼井優の素晴らしい踊りにあったと言っても過言ではなかろう。

元々、蒼井にはバレエの素養があったそうだが、それにしても実に素晴らしい踊りであった。こういうものは吹き替えやCGでは絶対に表現できない凄さである。このシーンだけでも、この映画を見る価値があるというものだ。
しかも、ややあどけなさや素人っぽさが残り、可愛らしいが整った顔立ちの美人というタイプではない蒼井が演じる事で、お芝居ではない現実感を作り出すことに成功している。
圧巻は常磐ハワイアンセンターのオープニング公演のシーン。蒼井をはじめとしたフラガールズのメンバーが、これまた吹き替えなしで見事なフラダンスを演じるのである。
スウィングガールズもそうであったが、実際に演じる俳優が見事な踊りを披露しているので、このシーンの迫力には圧倒される。
松雪泰子演じるフラダンスの先生もなかなか良い役なのであるが、先生という役どころだったために若干損をしている。彼女の踊りもなかなかのものであった。特に一人で練習している所を紀美子たちに覗き見されるシーンでは、その踊りに感動して紀美子らがフラガールになることを決意する重要な場面なので、中途半端な踊りでは逆効果になってしまう。
松雪に踊りの才能があるかどうかは不明だが、素人目に見てもなかなかの踊りだったのではないだろうか。こういった吹き替えなしの役を見事にこなすという努力が、しっかりした映画の土台を作っていくのである。

今や映画はCGのオンパレードで、折角の重厚なシーンをフルCGで軽くやられてしまうと映画自体が軽く見えてしまって、そういう意味では私はCGによる安易な表現には反対なのだ。この映画でもボタ山の表現などでCGが使われているのだが、その使われ方が押さえ気味なので、少し好感が持てた。
全編ばりばりのCGだらけでは映画が軽くなってしまい、さらに嘘くささを助長してしまう。ウソっぽいCGは、物語をリアルにするどころか安っぽくしてしまうだけで、百害あって一利なしだと思う。だから、そのようなCGによる表現をいかに最小限に留めるかが、今後の映画監督に課せられた課題ではないだろうか。


+++
良い映画だが、ツッコミどころも少なくない。
松雪が列車に乗って去ろうとするシーンで、ホームの反対側から少女たちがフラダンスでメッセージを送る。このシーンも感動的なのであるが、松雪は動き出した列車を止めて降りてしまうのである。バスじゃないんだから、動き出した列車は止められないよ!!

蒼井優のアニキがトヨエツというのにも違和感があった(実際の年齢は20歳くらい違う)が、無意味に若く見えるトヨエツの演技力を褒めておこう。しかし、トヨエツ演じる洋二朗とまどかに付きまとう借金取りが絡むエピソードは明らかに消化不足。もう少し何とか出来なかったものだろうか。時間が足りないのならカットしても良いシーンであったし、ここを描き切るのなら他のエピソードを切ってでも、もっと話を膨らませるべきだろう。
南海キャンディーズのしずちゃんのエピソードは不要だったかもしれない。彼女は演技とは程遠い大根役者ぶりであったが、そのぎこちなさが逆に素朴な田舎娘みたいな感じで、狙っているとするなら上出来だと思うのだが、これは素であろう。
まどかと洋二朗の絡みの部分や小百合の話など、これらの細かいエピソードにはカットされた部分も少なくなかったようである。
メイキングのほうには、そのあたりのカットされたシーンなども入っているようで、本編で不満を感じたのなら、メイキングのあるスペシャル版を見たほうが良いかもしれない(筆者は未見)。

せっかくの名演技なのに、それを十分映画に活用出来ていない富司純子にも勿体なさを感じた。これは富司の責任ではなくて、明らかに監督の責任である。それを差し引いても富司の演技力は突出していた。何だか富司純子主演で、もう一度緋牡丹お龍が見たいなあと思わせるものがあった。迫力満点のお龍さんが生まれることだろう。

最後に、もう一人だけ気に入った女優を紹介しておこう。
紀美子をフラダンスに誘い、父親の解雇で志半ばにしてフラガールズから去っていく早苗役を演じた徳永えり。彼女は大化けする可能性を感じた。今後に期待したい若手女優の一人である。