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●真夏の夜の夢 / 人間椅子

  1. 夜が哭く
  2. 転落の楽典
  3. 青年は荒野を目指す 
  4. 空飛ぶ円盤
  5. 猿の船団
  6. 閻魔帳
  7. 白日夢
  8. 牡丹燈籠 
  9. 世界に花束を 
  10. 膿物語 
  11. 肥満天使
  12. どっとはらい


  • 和嶋慎治 / guitar,vocal
  • 鈴木研一 / bass,vocal
  • ナカジマノブ / drums,vocal

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バンド結成20周年の原点回帰!待望の14作目。

遂に人間椅子はシェイクスピアにまで辿りついたのか。「真夏の夜の夢」とは粋なタイトルである。ならば「舌先裂けたまだら蛇」なんて曲があるかと思いきや、そんなのはなくてちょいとがっかり。

まさか人間椅子が20年も続き、しかも14枚ものアルバムを残す事になるとは思わなかった。数少なくなってしまったイカ天出身バンドであり、デビュー以来一環したブリティッシュ・ハード・ロックを突き詰めているというのは凄いことだ。

営業的には21世紀の今となっては、とてもメジャーになりえるサウンドではない。70年代のコテコテハードロックに大正ロマン・怪奇趣味満載の日本語歌詞、しかも和服を纏った時代錯誤も甚だしい衣装。イカ天登場時にも「いかもの」バンドとしてしか見られておらず、チャンピオンになるどころか1回戦敗退。(その時のチャンピオンはデビュー直前のジッタリンジンで、何だかとてもヤラセ臭い印象があった)
しかし実力派としての評判は高く、原宿イカ天ショップにて初のインディーズCDをリリースしている。

今回のアルバムは、その初期インディーズCD時代から「踊る一寸法師」までの時代を彷彿とさせる内容で、久々に人間椅子節が炸裂していて好感が持てる。
前々作よりドラムがナカジマノブに交代し、良くも悪くもポップな路線への変更が垣間見えていたのであるが、今回はナカジマノブのボーカルを1曲に押さえ、和嶋&鈴木コンビが強力に前面に出ていることで、20年目にしての原点復帰の印象を強く持った。

では、1曲ずつ紹介していこう。

  1. 夜が哭く

    人間椅子のアルバムの多くは1曲目でその出来の良し悪しが左右されると言って良い。
    その点で、前作、前々作は1曲目にキャッチーな印象がなく、アルバム全体のイメージを悪くしていた。しかし今回は素晴らしい。名作「黄金の夜明け」を連想させる出来である。
    和嶋のボーカルが1曲目っていうのも久々。

  2. 転落の楽典

    メタル調のへヴィーなサウンドも人間椅子の代表的なサウンドのひとつである。
    ナカジマノブのダブルバスドラが曲に厚みを加えていて、重厚なサウンドに仕上がっているが、この手の音には圧倒的に鈴木の歌声が似合う。圧巻のベースリフからギターソロに繋がるフレーズはまさにこれぞ人間椅子!

  3. 青年は荒野を目指す

    ミドルテンポのこの曲も人間椅子的には定番のサウンドである。このアルバムは過去の集大成的なイメージがあって、いずれの曲も何となく聴き馴染みがあり、非常に安心して聴ける音作りになっているのが最近作との大きな相違点であろう。
    ただ、悪意的に言えば耳なじみが良いという事はマンネリ的でもあり、新しい驚きという点では欠ける部分もあるのだが・・・
    タイトルは五木寛之の作品から。しかし、五木ですか・・・。

  4. 空飛ぶ円盤

    イントロの怪しいギターがいい。例によっていきなり曲調が変わり、どちらかといえばノホホンとした曲になってしまうのだが、そのギャップがまた面白い。
    「♪空飛ぶ円盤が~」というフレーズが、何だか水木しげるの書くペーソス漫画のような気の抜け方で良い。

  5. 猿の船団

    まあ、猿の軍団なんでしょうな。それ風のフレーズも出てくるし。
    この曲のみ、歌と作曲をナカジマノブが担当。ノブの声には賛否両論あるのだが、私は後藤マスヒロよりは良いと思うし、1曲くらいドラマーが歌っても良いだろう。
    人間椅子に長調展開を持ち込んだという意味においてノブの功績は大きいと思っているのだが、今回のアルバムでは押さえ気味。やはり20周年を意識してのことだろうか。

  6. 閻魔帳

    鈴木節炸裂。このように舐めるような歌いまわしは鈴木の独壇場である。
    だが、全体を通しての印象はいささか薄かったか。

  7. 白日夢

    和嶋のキング・クリムゾン趣味全開。ギターのアルペジオは、これも定番だ。ファンには非常に安心して聴ける曲。しかし今回はあれっ?と思うほど過去の曲に近い印象の曲が多い。
    もちろん同じではないのだが、それが原点回帰の印象をより一層強くする。


  8. 牡丹燈籠

    今までのアルバムならば、この曲がメインだっただろう。へヴィーでありながらドラマチックな展開は数々の名曲を彷彿とさせる。おどろおどろしいベースのリフ。そこに被る重厚なギター。ねっとりとした鈴木の歌声。そして急にテンポを変えて早いリズムのフレーズからギターソロ。まさに人間椅子独特の曲展開を継承した新たな名曲である。
    これぞ人間椅子20年の集大成と言っても過言ではないだろう。

    だが、このアルバムには次に衝撃的な展開が待っていた。

  9. 世界に花束を

    本作品中ナンバーワンの問題作。語りを中心とした曲の内容は反戦をテーマとしている。戦地からの手紙を歌詞にしているのである。人間椅子はかつて従軍慰安婦を題材とした曲を作るなど、多少は反戦的な曲づくりをしていた時代もあったが、ここまで明確に反戦を打ち出した曲はなかった。
    しかも和嶋による語りを中心とした音。前作で落語を織り込んだ曲があり、ある意味その延長とも言える文学的作品といえない事もない。
    メタル・クリムゾン展開のヘビーなギターサウンドをバックに訥々と語る和嶋の声は非常に重みがあり、反戦云々は抜きにしてもこの曲は新たな方向性の展開としては大成功だと言っておこう。

    しかし、人間椅子はここで終わらない。

  10. 膿物語

    初期人間椅子の作品の中に「人面瘡」という傑作があったが、何故かそれを思い出した。曲のイメージではなく、人面瘡とか瘡蓋とか膿とか、ぬらぬらり、だらだらり、なんていうフレーズが似たようなイメージを想起させたのだろうか。
    ここから最後まで、非常に人間椅子らしいスピードで突っ走っていく。この疾走感は久々だなあ。サビの「ぬらぬらり」と、途中のギターソロが物凄く好き。
    この曲は聴きこむと中毒になり、頭の中をリフレインするようになる。人間椅子中毒患者には良くみられる傾向なので要注意。

  11. 肥満天使(メタボリック・エンジェル)

    一時期、鈴木の曲には自分の趣味や生活を題材とした曲があり、アルバムの中の白眉となっていたが、その位置づけに相当する曲である。中期にはアルバムを発売するたびに「パチンコ」を題材とした曲があって、これが暗い人間椅子の楽曲の中では比較的明るいサウンドで非常に好きだった。
    曲の出来も良いのであるが、肥満天使とは何やら意味深である。以前から太り気味傾向にあったようだが、鈴木君、ジャケットやサイトの写真を見ると本当にやばいくらい太ってきてるんじゃなかろうか・・・
    昔からのファンとしては膿物語から肥満天使への流れは非常に楽しめる・・・とここまで書いてはっと気が付いた。
    「膿物語」って「海物語」か!やはりパチンコだったのだ!!

  12. どっとはらい

    ラストはメタル・クリムゾン調のサウンドで締める。
    人間椅子はブリティッシュ・ハードロックをベースにブラックサバスの味付けの上にキングクリムゾンのソースをかけたような音で、だからこそ私のお気に入りなのであるが、中でもキング・クリムゾンを意識したリフやフレーズを多用したプログレ風のサウンドが良い。
    今回は中でも最近のメタル・クリムゾンを意識しているような音づくりになっていて、これもまた新たな定番になりそうな曲である。

    ラスト3曲の展開は、ここだけ別のミニアルバムにしても良いくらいの出来で、久々に聴いていて痛快さを覚える内容であった。文句なしの名盤である。

以上のように、昔からのファンにとっては非常に耳馴染みの良い音に仕上がっていて、何度も言うが過去の集大成的イメージを強く感じるアルバムとなっている。
それを良しとするか、物足りないとするかはお好み次第であるが、近年になく力強いイメージを感じ取ったので、わたし的には良しとしたい。