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2007年10月09日

●家守奇譚/梨木香歩

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著者:梨木香歩 新潮文庫他

【気高き精神を持つ男の物語】

8月のある日中、電車に乗っていたらふと反対側に座っている女性に目が留まった。
年の頃は二十代後半であろうか、化粧っ気の薄い顔は多少日焼けしており、Tシャツに七分丈のジーンズというラフな格好である。バレーとかバスケットとか、そんなスポーツをやっていたと思われる体格の良いお嬢さんで、敢えて誤解を恐れずに言うならばビーチバレーの浅尾某を上品にしたような感じの人であった。
その、どちらかといえばスポーツウーマン的な彼女が電車のシートに座ってゆったりと文庫本を読んでいる。その姿が実にリラックスしていて良い感じであった。

電車で本を読んでいる人というのは基本的に本に集中している場合が多い。多少前かがみで食い入るように目を通す。それは、外部の余計な騒音を遮断し、本に集中したいがための所作なのであろう。もちろん、かく言う私もそういう読み方をしているに違いない。

ところが、かのお嬢さんは実に電車の中でもリラックスしながら読んでいた。まるで、庭の縁側に座って、傍らに丸くなって寝ている猫を配し、茶菓子など摘みながら本を読んでいる、といった風情なのである。縁側で日向ぼっこをしながらゆったりと本を読むという雰囲気を電車の中で醸しだすのは並大抵の技ではない。

このお嬢さんが、そこまで達観した猛者である可能性も否定はできないが、どうやらその自然体は読んでいる本に影響を受けているゆえの所作なのではないかと思われた。
その本は文庫本で、本屋の紙カバーなどはしておらず、表紙のタイトルが何とか読み取れる。そんなにリラックスしながら読める本とは何だろう?と気になってよく見てみると、そこには「家守奇譚」と書かれていた。

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