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●地獄(2002年)





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2002年:大映

監督:石井輝男

出演:前田道子、佐藤美樹、丹波哲郎他

【平成の極悪犯罪者を石井輝男が裁く!】

平成時代の凶悪事件「幼女連続誘拐殺人事件」「オウム真理教事件」をメインにして、その極悪非道な犯罪の内幕を再現した怪作。
8割がたオウム真理教の犯罪を再現した再現ドラマみたいになっているが、映画自体ものすごくチープなのに、オウムの再現シーンだけが妙にリアル。オウム真理教そのものがものすごくチープだったという事を再認識。これはある意味で凄いことだ。

元世界真理教(当然、オウムがモデル)の信者だった少女の所に突然上品な老婦人が現われる。彼女が救われるためには、ここ数年、日本中を騒がせていた凶悪犯罪の実情を再認識し、彼らが地獄でどのような裁きにあうのかをその眼で確かめる必要があると説く。
この老婦人は実は閻魔大王であって、閻魔大王が現実世界でなかなか審理の進まない凶悪犯罪者の裁判に渇を入れ、地上で裁けないのなら地獄で裁いてやると豪語するのである。

もう、このシチュエーションだけでナニが何だか訳が分からない。
要するに石井輝男が怪しからん凶悪犯罪者に天誅を下すという映画なわけである。
閻魔大王の語る犯罪者への裁きの説明が凄い。
「地獄では目には目を、歯には歯をではなく、目には目と歯を、歯には歯と目をなのです!」要するに倍返し。いや、永遠返しなわけだ。怒ってるねえ、石井監督。

そういう意味でこの映画を見ると、ある意味スカッとする部分もある。
予算がないので地獄のシーンはかなりチープ。鬼の造型も、これが21世紀の映画だとはとても思えないような出来だし、地獄の門がまさに女陰の形をしていたのには失笑した。
「ねじ式」などではチープな特撮シーンが逆効果になってしまい興ざめであったが、この作品ではそのチープさが生きている。
先ほども書いたが、特に真理教の再現シーンでのチープさは、逆に真理教が本当に中身の無いチープな教団であったことを浮き彫りにしていて非常に説得力があった。
ここだけは本当の再現シーンのようであり、それが低予算で出来てしまうんだから、真理教ってのは本当に安物集団だったって事だよな。

序盤では、幼女連続殺人事件がテーマになっているのだが、この再現ドラマが凄い。主人公役の俳優が、まさに宮崎勤そのもので背筋が寒くなった。
「狂人のふりをして死刑を免れようとしている」と閻魔大王に言い切らせるあたり、石井輝男の怒りの強さを感じずにはいられない。再現ドラマの不気味さが精神的に堪えてしまうので、それを見せられた後の犯人に対する憤りは倍増するように思う。
安っぽい人権問題を真面目に語るより、鬼畜は殺すのが相当という考え方には、ある意味共感を覚えざるを得ない。
男性の性犯罪者は死刑にするよりもチンコ切っちゃったほうが余程堪えるんじゃないかなどと思ったりもするが、生きたまま永遠に鋸引きの刑に処される姿は、ある意味溜飲が下がる場面でもある。特撮がチープな分、リアル感が損なわれるので、余計に鋸引きの刑が陰惨ではなく、見るものに溜飲を下げさせてしまうという効果を生んでいるのが凄い。

幼女連続殺人事件に対して審判が下った後、話は怒涛のようにオウム真理教の再現ドラマに流れ込んでいく。主人公の少女は教祖の毒牙を寸でのところで逃れるのだが、同僚の少女は犯されてしまう。これも、実際そうだったんだろうなあ、と思えるようなシーンの連続。特に教祖役の俳優があまりにもスケベジジイぶりを好演しているので、まるでドキュメンタリー映画を見ているようであった。

石井映画の常連で、私の大好きな女優の藤田むつみさんは、真理教に所属する看護婦役で出てくるのであるが、相変わらずの素晴らしい脱ぎっぷりで、ここだけにっかつロマンポルノのような印象であった。

途中、まったくストーリーには関係なく丹波哲朗が出てきて、そこだけが唯一笑える部分だった。
ラストシーンは、裸になったねーちゃんたちが屈伸しながら太陽を拝むという衝撃的幕切れであった。下らない信仰など止めて唯一永遠なる太陽を信仰せよ、ということなのだが、それでいいのかよ!ってくらいビックリした。このわけの分からなさが石井輝男テイスト。