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2006年:東宝
監督:本広克行
出演:ユースケ・サンタマリア 小西真奈美 トータス松本他

【この映画を見てもうどんを食いたいとは思わない】

映画ではあるが、テレビドラマの延長線にしか見えなかった。テレビドラマ化されていないにも関わらず、この映画は映画とは思えなかった。
その理由は軽すぎる演出にあるのかもしれない。ユースケ・サンタマリアの臭い演技にあるのかもしれない。小西真奈美のやる気の無い演技がそう思わせたのかもしれない。
本広克行という監督は「踊る大捜査線」を監督した人だそうだが、あの映画もテレビドラマの延長でしかなかった。結局は監督のせいだろうか。

前半は、ニューヨークでの芸人生活に失敗した松井香助(ユースケ)が故郷の讃岐に帰り、うどんをテーマにしたタウン誌を売ることで讃岐うどんブームを作る成功譚となっている。
軽いギャグの連続で、まさにテレビ的展開の軽いノリで話が進行していく。
駆け出し編集者の宮川恭子(小西)は極度の方向音痴で次々と車(日産マーチ)を破壊し、色違いの車に乗り換えていく。これは日産とのタイアップか。あまりにもベタな設定と進行なので笑うに笑えず。

だが、後半になり話は一転する。
うどんブームは去り、ブームの喧騒の煽りを食らって味が落ちる店、渋滞に近所から苦情が出てしまったために閉店する店などが次々と現れ、ついにはタウン誌も廃刊となる。
ブームの喧騒とは全く関わり無く黙々とうどんを作り続ける父の姿を見た香助は父の跡を継ぐことを決意するが、父は急な病で死んでしまった。
だが、姉(鈴木京香)は、父が居なければ松井のうどんは成立しないと、店を畳む事を決意する。

この映画は2時間を越える大作なのであるが、正直前半はどうでも良い。
ありきたりの成功譚でしかないし、それをベタなギャグをちりばめて展開しているから、前半1時間は本当に退屈であった。
話が面白くなってくるのは、後半、うどんブームが去っていくあたりからである。
ブームに踊らされた人々の栄枯盛衰を比較的正直に描いている点には好感が持てた。

話の持って行きかたとして、前半の導入部は必要不可欠だとは思うのだが、この映画は後半だけでいい。頑固な父と息子の物語で良かったのではないだろうか。
やりたいことが多すぎて、脚本をコンパクトに纏められなかったのは監督の責任である。正直、前半の幾つかのシーンは割愛しても良かったと思う。
エピソードをそぎ落としていく事で話に纏まりが出て行くのだ。あまりにも小ネタが多すぎて話がどんどん散漫になってしまった。

姉が店を畳む決意をしたあと、父のうどんの味を「一回だけ」再現しようとしてうどん打ちにチャレンジする香助と、義兄の藤本(小日向文世)。
このあたりの展開は、どうしても伊丹十三の「たんぽぽ」を連想してしまう。日本において、食い物の映画を作る上で「脱・たんぽぽ」を目指すのはあまりにも難しいという事か。
姉がうどんを食うシーンで後光が射してくるシーンなど、まるで「たんぽぽ」のラーメン試食シーンそっくりで幻滅してしまった。(それ以外に表現方法がないといえばないんだけど)

そして、紆余曲折の末、何とか父のうどんに近い味を再現するのだが、香助はうどん屋を継がずに再びアメリカに旅立つのだった。
ここで、香助がうどん屋を継がないという設定は正解だと思うが、それでもう一度アメリカへ行ってコメディアン(俳優?)として成功してしまうというのは話としては全然面白くない。どうせならアメリカでうどん屋を開業した、というような話にした方が良かったのではないだろうか。

讃岐ロケの中で、実際に存在する製麺屋やうどん店のおばちゃん、おじちゃん達が出てくるのは悪くない。そこで供されるうどんは本物の讃岐うどんである。それらの本物のシーンだけは説得力があったが、何故かそれを見てもうどんが食べたい!という感情が沸いて来ない。
本来、主役であるべきうどんが主役になりきっていないのだ。

この映画の主題はうどんではない。仮にうどんでなくても物語は成立するからだ。
いや、本来ならばうどんでなければ成立しないはずである。讃岐にどっかりと根を下ろし、ソウルフードとして定着しているうどんだからこそ、この物語は成立したのである。
それにも関わらず、うどんじゃなくても良かったな、と思わせてしまう何かが、この映画にはある。何故なら、うどんが主題ではないからだ。そこがこの映画の最大の誤算であり、失敗だったような気がする。

フジテレビのバックアップの賜物というだけの事あって、無駄に豪華なゲスト出演者が多く、そういうチョイ役で有名人が沢山出てくるのが好きな私には、その部分だけは充分に楽しめた。香川県出身者を集めており、南原清隆、松本明子、藤澤恵麻、高畑淳子などが本当にチョイ役で出ているほか、温水洋一、小泉孝太郎、石井正則、江守徹、嶋田久作なんかも出演している。中でも一番笑えたのは大泉洋で、アスパラガス(北海道名産)を持ち込み、その場で天ぷらにして貰って食っていた。

まあ、肩肘張らずに寝そべって見る映画としては丁度良いのかもしれないが、それにしても2時間を越えてしまうのは少々長すぎたのではあるまいか。