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●クローバーフィールド/HAKAISHA

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リジー・キャプラン, ジェシカ・ルーカス,
T・J・ミラー, マイケル・スタール=デヴィッド,
マット・リーヴス

アイデアの勝利とも言うべき映画である。

あるパーティをハンディカメラで撮影していた男が、突如出現した怪獣に街を破壊され、逃げ惑う姿をハンディカメラに撮影し続ける。そのビデオを何の編集もなく流し続ける、というスタイルになっているのだ。

最初から最後まで、ハンディカメラで撮影した映像のみを流しており、BGMすら流れない。まさに観客が撮影者テッドになりきって、この惨劇を体験しているかのようである。
このような形式の映画には「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」というホラー映画があったくらいで、他に類をみない。

怪獣映画で臨場感のある映画といえばスピルバーグの宇宙戦争があったが、この映画は臨場感どころの騒ぎではなく、まるで現場そのものの映像なんだから、これを映画館でドルビーサラウンド付きで見たら凄いことになっていただろうなあ。吉祥寺の爆音映画館で、大音響で見た友人の話だと、「もうどうにでもしてー」という感じだったとか。
三半規管のヨワい人は、おそらく手ぶれまくりの映像を見たら目が回って気持ち悪くなるのではないだろうか。そういう人にはオススメできません。(劇場公開時には注意事項として掲示されていたそうである)

肝心のモンスターの姿は殆んど秘匿される。その謎が怖さを倍増していく。最初の破壊攻撃の時、ほんのちらっと姿が写るのであるが、その後「アレは何だ?」「生物か!」という会話が出てくるだけで、我々には殆んど情報が入ってこない。
そのうちモンスターの子供のようなたくさんの小さな怪物が人間を襲う姿がちょこっと写る。これがまた怖い。今のは何なんだ?あれも怪物なのか?!
怪物の全貌が不明というのは「エイリアン」の手法だが、このようなハンディカメラで撮影した擬似体験的な映画では、まさにその効果は絶大である。

技術的に見てみると、ハンディカメラで撮影しているように見せかけているだけで、カメラは普通の映画撮影用のカメラである。それを手持ち撮影しているのか、それ風な動き方をさせているのか分からないが、これは普通のカット割で撮影するよりも大変だったのではないかと思う。特にCGとの合成でカメラがぶれるようなシーンには驚いた。ある意味、CGも手抜き出来るし、カメラ側に動きを入れる事でCGのデメリットを完全に無くしているわけである。これは凄いな。

ビデオは、元々主人公のロブとベスの二人が遊園地に遊びに行く所を撮影したものに、間違ってサプライズパーティの映像を被せて撮影してしまった事になっている。従って、ビデオが止まると数秒間、その下に写っていた遊園地のシーンや地下鉄のシーンなどが写るのであるが、これがなかなか小細工が利いていて効果的である。特に象徴的なのがラストシーンだ。最後にカメラが地中に埋まり、そこで停止するところで終わるのだが、そのあと、1ヶ月前に撮影していた遊園地でのシーンが再生される。そのシーンを注意してみていると分かるのだが、観覧車に乗って二人の姿を撮影する背景に、何かが空中から降ってきて海中に没するシーンが写っているのだ。これがモンスターという事なのだろうか。このあたりの芸の細かさに、JJエイブラムスの手腕を感じてしまうね。

モンスターが果たして何者であり、何のために破壊活動を行ったのか、そして、最後にはどうなったのか、などの謎は一切明らかにならない。主人公たちも恐らくリリーを除いて全員死亡しているのだろうが、ロブとベスが地中に埋まった(らしい)状態で終わってしまうので、確実にどうなったかは不明である。
そのあたりの不完全さに納得できない人も多いだろう。だが、謎は多いほど面白い。それが明らかな設定ミスとか、何も考えずに適当に撮ったような作品なら別だが、このような作品の場合、設定ミスや矛盾点もミスにならない面白さがある。そこを深読みしていくのも映画の面白さのひとつと思うが、いかがなものであろうか?

映画はかなり特撮映画にインスパイアされているようで、エンドロールに流れる曲が伊福部テイストなのにはニヤリとさせられた。

映画としては、本題に始まる前のパーティのシーンが嫌に冗長的で長ったらしく、飽きが来てしまう。ここはもう少し削っても良かったのかなあ?だが、何やら隠し映像などがあるようなので、もう一度DVDでじっくり見てみたい気がする。

映画中盤から、モンスターの姿が次第に明らかになっていくのだが、これが残念ながら興ざめ。はじめはタコかイカの怪物みたいに思われたのだが、結局はゴジラの手足を長くして変形させたような異形のもの。このモンスターデザインはそれほどうまいとは思わなかった。小さなモンスターも「遊星からの物体X」の変形した犬のバリエーションみたいな雰囲気のエイリアンで、これももうひとつだったなあ。

小モンスターに噛まれたマリーナは最後に目から血を流して爆発するのだが、最後の瞬間が布ごしにシルエットになって一瞬だけ飛びちる血しぶきが写るのが恐ろしい。
また、撮影者のハッドがモンスターに食われるシーンもセンセーショナルであった。モンスターの顔を正面から写しており、その顔をみてデザインの酷さにげんなりしてしまったのだが、次の瞬間、大きく開けた口が迫ってきて・・・

これは劇場で見たら大変な事になっていただろう!!