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●金星人地球を征服

金星人地球を征服 [DVD]
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【サイコーでサイテーの金星ガニの造形に酔いしれろ!】

鬼才、ロジャー・コーマンの名作?、「金星人地球を征服」待望のDVD化であります。
タイトルを見てもピンと来ない人でも「金星ガニ」の名前を見れば、ああと思い当たる人も多いのではないでしょうか?
現代の感覚からすれば、ユーモラスなイメージしか感じられないデザインの金星ガニ(命名は大伴昌二氏らしい。さすがだ)が地球を征服するというB級SF映画です。

かつてビデオ化されましたが、多分LD化はされていないと思われます。その意味で、今回のDVD化はB級SFマニア待望の作品と言って良いと思います。
あの幻の作品が1500円で手に入る幸福!!これぞB級SFマニア必携の逸品!!!

主人公が無駄に豪華です。こういうB級映画は良いですね。
宇宙人との交信を可能とした天才科学者トム・アンダーソンは、夕陽のガンマンでモーティマー大佐を演じたリー・ヴァン・クリーフですし、その友人の科学者ポール・ネルソンは、何とスパイ大作戦のリーダー、ピーター・グレイヴスです。

そんなわけで、役者に不足はありません。
ストーリーも、多少のふらつきはあるものの、なかなか素晴らしいんです。
人類が金星ガニの魔の手に落ちて次々と洗脳され、ついにはポールの妻まで洗脳されてしまいます。ポールは断腸の思いで妻を殺し、トムの目を覚まさせようとしますが失敗。
一方、トムの妻クレアは果敢にも一人で金星ガニを倒すべくライフルを持って金星ガニの棲む洞窟に入って行きますが、逆に殺されてしまいます。
クレアが一人で金星ガニ退治に行った事に気づいたトムはようやく目を覚まし、金星ガニを倒すために最後の戦いに挑んでいく。

なんと素晴らしいSF映画でしょう。雀坊堂大絶賛!
・・・と、ならないのは、全て予算が無いからに他なりません。

中でも悲惨なのが金星ガニの造型。このダサカッコ良さがカルトB級SFファンを虜にしているわけですが、予算の無さっぷりが露骨に見えてしまって、そこがもう残念で仕方ないわけです。いい味出してるんだけどねー、やっぱりコレじゃねー。

ただ、予算の無い中で、それなりの技を見せているのが、さすがロジャー・コーマンと言いたくなります。
金星ガニは全てのメカを停止させてしまうという技を使って人類をパニック状態に陥れるんですが、このパニックシーンが秀逸なんです。逃げ惑う人々が手に持ってるのは人形だけだったり、汚いサックス1本だけだったり。
ここは上手いなあ。
お金を掛けなくても恐怖感を演出する良い効果になっていると思います。

映画の怖さは正義の主人公の狂気っぷりにも現れます。
ポール・ネルソンの妻は無残にも金星ガニの部下である金星コウモリにとり憑かれてロボット化されてしまうんですが、それをあっさり殺しちゃうんだよポール!!いいのかそれで!!
ホゲホゲ言ってるだけの音を金星人の声と聞き分けてしまうトムも、傍から見ると狂気しか感じません。たった一人で金星ガニを退治しようとするトムの妻もある意味狂ってるなあ。

でも、そこまで盛り上がっているのに、その狂気の主人公が最後に対峙する金星ガニの造型がアレではね!!
1956年という時代は関係ないでしょう。1年前に作られた「宇宙水爆戦」のミュータントの造型は今見ても怖いし、実に素晴らしいクリーチャーなんですから。
それが、顔は怖いけど、全体的にはユーモラスなイメージしか無い金星ガニ。もうズッコケですよ。しかも金星ガニは1体だけ!
こいつがうじゃうじゃ沸いてくるんなら、それはそれでそれなりの恐怖(スピルバーグが好きな物量の恐怖って奴ね)もあるんですが、たった1体しか居ないんじゃ恐怖も半減どころか全くありません。

お約束どおり、自分の間違いに気づいたトムは最後に金星ガニと対峙するんですが、バズーカ砲の放射も跳ね返すほどの強靭な肉体を持つ金星ガニが、とってもシンプルな方法であっさり死んでしまうのは「宇宙戦争」にも通じるモノがあります。人類の英知を尽くした最終兵器で死ななくて、家庭の台所用品みたいな武器で死んじゃうってのが実に風刺が効いてていい感じ!
でも、死にかたがあっけないのでこれまた幻滅。金、かけてないのがモロばれ。

全体的には、おカネの無さから来るショボさは感じるものの、主役級の2人の演技が素晴らしいので、大変良い映画になっています。だからこそ、金星ガニの造型が惜しい。
でも、この映画をここまで有名にしたのはその金星ガニの造型です。ある意味、何にも影響を受けていないオリジナリティも感じますから、あまり否定することも無いでしょう。
いや、どんなにショボい造型でも、全面的に金星ガニは肯定されるべき存在なのかもしれません。

この傑作SFは後に、「金星怪人ゾンターの襲撃」と題して1966年にリメイクされますが、残念ながら超弩級のD級SF作品でした。現代のCGを駆使してリメイクしたら、さぞや素晴らしいB級SFに仕上がることでしょう。スピルバーグかジョー・ダンテ(いずれもこの映画のファンという噂)あたりが物凄い予算をかけて、無駄に立派なリメイクをして欲しいもんです。