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●恐怖のショック療法 / エドガー・ウィンター・グループ

恐怖のショック療法(紙ジャケット仕様)
エドガー・ウィンター・グループ
B005OCSUOM

 長い間廃盤で入手不可能であった名盤が、紙ジャケット仕様で再発売された。このレコードの再発は物凄く嬉しいのである。しばらく殆んど更新していなかった当サイトであるが、これをキッカケにしてぼちぼち再始動しようと思う。


 歴史的名盤という言い方は安易ではあるが、このアルバムにタイトルをつけるとするなら、まさに歴史的名盤と言って良いのではないだろうか。1974年の作品であるが、今聞いても全く古臭く感じないのが素晴らしい。

 しかしねえ、邦題がダサすぎだよね。恐怖のショック療法ってさあ。ジャケットを見て頂ければ分ると思うが、ファッション雑誌の表紙かと思っちゃうくらいカッコイイのに、恐怖は無いだろうがよ。

 敢えて裏ジャケットも見て頂こう。なかなかのイケメン揃い(イケメンというよりも「男の娘」って感じすらする。特にRick Derringer!!)で、当時の日本の女子の間でもかなり人気になっていたバンドであった。

 ルックスだけでなく、曲の完成度もかなりのもので、特にこのアルバムの出来が良い。彼らの中では最高傑作と呼んでもいいのではないだろうか。バンド名義のアルバムは2枚しか出してないから最高傑作も何もないんだけど。しかし、もう1枚のアルバムのタイトルはEdgar Winter Group With Rick Derringer なんだけど、この邦題が「謎の発光物体」(笑)確かにジャケットに謎の発光物体が写ってるけどさあ。ヒプノシスの弊害ってやつだな。

 Edger Winterといえば、百万ドルのブルースギタリスト、Johnny Winterの弟でキーボード&サックス奏者である。アルビノの兄弟としても有名だった。
 
 アニキがブルース一辺倒だったのに対して弟は何でもありのスタイルで、Ronnie Montrose(G)、Dan Hartman(B)、Chuck Ruff(Ds)を迎えて結成されたThe Edger Winter Groupはグラム志向のアメリカンポップスバンドであったが、兄のイメージが強すぎたのか、日本では今ひとつ地味な印象である。よりハードロック志向に向かったRonnie Montroseが脱退した後、プロデューサーとして参加していたRick Derringer(G)を正式メンバーに迎えて製作されたのが本作である。

 当時、英国にはQueenという不世出のバンドが台頭してきていて、イギリスのQueen、アメリカのEdger Winter Group的なノリで、日本のミーハー女子のハートを掴んでいた時期があった。当時のミュージックライフ誌で、このアルバムに最高点の5点がつけられていたりしたもんだったが、その後ML誌は強烈にQueen押しを展開し、また、Bay City Rollersが大旋風を起こしたこともあって、その後霞んでしまったのは残念で仕方が無い。

 どの曲も素晴らしくて全部シングルカットしても売れそうな曲ばかりなんだけれど、私のお勧めは7曲目Someone Take My Heart Away(邦題:待ちわびた誘惑)。凄くメロディアスなバラードで、それまでどちらかといえば力強いロックばかり聴いていた私が初めてバラードっていいなと思った曲である。Edgerの伸びのあるボーカルが素晴らしく良い。

 その他では1曲目Some Kinda Animal(邦題:俺たちは野獣だ!)の冒頭のギターにシビれて、一生懸命コピーしようとしたのを覚えている。2曲目Easy Streetはジャズっぽいピアノに乗って、物凄くカッコイイ歌が流れてくる。これは今でもシビれます。

 ロック、ジャズ、ブルース、バラード、サザンロックなど、あらゆる音楽のいいとこ取りをしているためにアルバムとしての完成度は物凄く高いのであるが、散漫な印象も拭えない。これがアメリカンロックだ!と言い切れるような音ではないのだ。悪い言い方をすれば器用貧乏的なイメージがしてしまう。そこが、Edger Winter Groupの良いところでもあり、欠点でもあったのだろう。Queenはどの曲を聴いてもQueenだ。だが、EWGの曲には個性的な部分に欠けるところがある。それは、個々の曲としては秀作であっても、バンドとしては失敗作という事になってしまうのかもしれない。

 Edger Winterという人はサポートに徹することが好きなようで、このアルバムを聞いてもEdgerらしさというものがあんまり感じられない。むしろ、Dan Hartman Groupと呼んで良いんじゃないだろうかという位の内容になっている。そこがバンドとしての弱さだったのかなあ?という気もする。売れたバンドっていうのは個性のぶつかり合いだからね。強烈な個性を持ったフロントマンが要るからこそ、大衆を魅了できるのであって、そういった傲慢さが欠けていたのが、このバンドの問題点だったと言えるのではないだろうか。

 クレジットを見ると、作詞作曲の殆んどを手がけているのはDan Hartman。この人の才能は並大抵のものではない。映画「ストリート・オブ・ファイヤー」の劇中歌「I Can Dream About You」はこの人の作品である。聞き覚えのある人も多いだろう。

 ちなみにDan Hartmanは1994年に44歳の若さで死去。死因はHIVによる脳腫瘍。ゲイであったことは死ぬまで隠されていたようである。