我々の世代には、「トンガ」という名前にはある特殊な思い出がある。
南洋の島国「トンガ」
世界一大きな王様として、ギネスブックにも登録されている「国王トゥポウ4世」
だが、トンガといえば、我々の世代にとっては、南洋からやってきた力士たちの事である。
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今でこそ、大相撲は外国人力士だらけになっているが、その昔、外国人力士といえば「高見山」しかいなかった。
その高見山に続けとばかり、南洋はトンガ王国から6人の若者たちが大相撲に入ってきたのである。
それがトンガ力士たちであった。
椰子乃島、南乃島、福ノ島など、南洋の力士らしい個性的な「しこ名」を貰ってそこそこの位置まで上がっていったが、所属していた朝日山部屋のお家騒動の余波を買って、泣く泣く全員廃業の憂き目に会ってしまう。
一部で日本の水と相撲の伝統的なしごきに合わず帰国したように思われている節があるが、彼らが廃業したのはそんな事ではなく、相撲協会のどろどろした内幕の余波を受けての事だったのである。
余談になるが、トンガ力士の中のひとり、福ノ島は、その後全日本プロレス入りして「プリンス・トンガ」に変身した。
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さて、そんな物思いとは全く関係なく紹介しちゃうのが今回の大怪獣トンガである。
このトンガはトンガ王国のトンガなのか、或いは偶然の一致なのか良く分からない。
だが、どうしてもトンガ力士のイメージをぬぐえない私には、大怪獣トンガなどと言われると、キングコングやビッグフット、あるいはゴーロン星人のような猿系の怪獣を思い浮かべてしまうのである。
では、早速大怪獣トンガを見てみよう。
なんだよこれ、ギエロン星獣じゃんか。
イメージ狂うなあ。
ウルトラセブンに出てきたギエロン星獣そのものだね、ひねりも何も無い。
ギエロン星獣というのは、ウルトラセブンの「超兵器R1号」という回に登場した怪獣である。
この話はウルトラセブンのストーリーの中でも名作に数えてよいひとつであろう。
人間が勝手に発明した超兵器R1号。この実験のために生物が住んでいないと思われたギエロン星を標的にしてR1号を発射するのだ。
ギエロン星を爆破する前、ダンは、「地球を守るためなら何をやってもいいのか?」と、フルハシに食ってかかる。
「地球は狙われているんだ。今の我々の力では守りきれないような強大な侵略者がきっと現れる。その時のために超兵器は必要だ」と答えるフルハシ。
「侵略者は、もっと強烈な破壊兵器を作りますよ!」と言うダン。
「我々は、それよりも強力な兵器をまた作ればいいじゃないか!」と答えるフルハシ。
「それは、血を吐きながら続ける哀しいマラソンですよ」と言い切るダン。
最後の台詞は、ウルトラシリーズの中でも屈指の名言であろう。
R1号は見事にギエロン星に命中して、星は消滅する。
だが、その消滅したギエロン星から1個の巨大生命体が地球に向かってやってきた。ギエロン星に生物が存在したのだ!
「なにーっ!」と振り返って叫ぶキリヤマ隊長。お約束だね。
ストーリーの主題は、当時行われていた核実験やベトナム戦争に対する批判的意味合いが強いと思われる。
人間の身勝手で核実験を行う。その実験場には生物が住んでいる。
人間こそ住んでいないが、間違いなくその他の生物は存在しているのだ。
それを、人間の身勝手で勝手に大量虐殺することは許されるのか。そういう事に疑問を投げかけた作品であった。
何度やっつけても死なないギエロン星獣。
それを退治できるのはR1号の何倍もの破壊力を持つR2号だという博士。
しかし、そんな事をしても良いのだろうか。
ギエロン星獣は侵略者ではない。故郷を破壊されたことに復讐しているのだ。地球人の我侭に対する被害者でもある。
だが、地球を破壊しようとする者は、理由はどうあれ退治されなければならない。
それを退治するのは地球人ではないウルトラセブンである。
ギエロン星獣がセブンにやられるシーンが悲壮である。鳥なんだねえ、翼をもがれると大量の羽毛があたり一面に散るのだ。
この羽毛が切ない。
しかも、最後はアイ・スラッガーを手に持って喉笛を切り裂くのだ。今までのウルトラセブンには無い、生々しい殺し方である。
最後にはダンの意見が取り入れられ、R2号の開発は中止されるのであるが、それにしても暗く重たい話であった。
そんな名作の怪獣の名前にトンガは無いだろう!
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たまにはちょっとマジメに解説なんかしちゃったりしてみました。
次回はもうちょっと不真面目に行きましょう。
では、また。